【寄付集めの成功例に迫る】危機的財政状況から脱するため、全庁を挙げて民間資金獲得に動く~京都府京都市~
2022-02-24 08:00:00
城内上空の景色

京都府京都市は、2020年度から本格的に企業版ふるさと納税の活用に取り組み始め、初年度の1年間で約1億1,600万円もの寄付金を集めています。2021年度も同程度の寄付獲得が見込まれており、企業版ふるさと納税による寄付金は、市の大切な財源となっています。寄付獲得に向けて京都市がどのような取り組みを行っているのか、企業版ふるさと納税の担当者に話をお聞きしました。

持続可能な財政の確立に向け、民間資金獲得の体制を強化

二条城
(写真=本格修理事業が進められている世界遺産・二条城)

平安京が開かれて以来、1,200年余の歴史をもつ京都市。市内には、先人たちが残してくれた文化遺産が無数にあり、そういった文化や景観、環境の保存・再生を始めとした、京都市ならではの取り組みを進めてきました。そうしたこともあり、市の財政は危機的状況にあるといいます。

一方で、個人版のふるさと納税においては、ほかの自治体が返礼品競争を繰り広げるなか、積極的に取り組んでいませんでした。とはいえ、個人版のふるさと納税に関しては、入るよりも出ていくほうが多いという状況を看過するわけにはいかないと、2020年度に初めて行財政局総務部総務課のなかにふるさと納税担当を置くことになり、同時に企業版ふるさと納税の担当も置かれました。

事業を行う担当課の強い危機意識が寄付につながる

5つの景観
(写真=景観を次世代につなぐ取り組みは、市が継続的に行ってきた大切な事業のひとつ)

こうして、企業版ふるさと納税の窓口ができたとはいえ、実際に寄付獲得に動いたのは事業を行う担当課だったといいます。前述したとおり危機的な財政状況もあって、そのころには各課が行う事業に対し、民間資金を積極的に獲得する動きが本格化していました。様々な事業を遂行するため、全庁を挙げて企業版ふるさと納税を活用した寄付獲得に動きだしたそうです。

各課が日ごろから付き合いのある企業にアプローチを行う一方、企業版ふるさと納税担当は制度について解説するリーフレットを作成するなど、後方支援を担当。また、庁内に問合せ窓口ができたことで、寄付を検討している企業と事業担当課との調整を行えるようになり、寄付につながったケースもあったといいます。

細分化された寄付募集プロジェクト。全庁挙げて民間資金の獲得に取り組む

京都市立芸術大学イメージイラスト
(写真=京都駅近くへの移転を予定している京都市立芸術大学)

2022年2月現在、ふるさとコネクトに載っている京都市のプロジェクトは18に上ります。内容を見てみると、様々な分野のプロジェクトが満遍なく載っていることに気づきます。これは、各担当課が、寄付が必要な事業、寄付が集まりそうな事業に絞り募集を行っているためで、それぞれのプロジェクトには事業を進めようとする担当課の思いが詰まっています。

長い歴史から来る圧倒的な知名度と、職員数1万人超という政令指定都市ならではの規模感から、京都市の寄付集めはほかの小規模自治体と比べると有利な環境にあるかもしれません。とはいえ、知名度だけで寄付を獲得するのは難しい事業も多く、各部署が根気よく関係企業へのアプローチを続けていることが、寄付獲得につながった大きな要因だといえます。

京都市が企業版ふるさと納税に本格的に取り組み始めてから2年目が終わろうとしています。継続して寄付を得ることの難しさが課題として残されており、寄付を獲得するための動きは緩める訳にはいかないといいます。民間資金を積極的に取り入れようとする京都市の取り組みに賛同いただける企業の皆様には、ぜひ一度寄付募集プロジェクトに目を通していただければと思います。数あるプロジェクトのなかから、SDGsの達成やCSR活動など、自社にあったプロジェクトが見つかるかもしれません。
(日下智幸)
京都市の寄付募集プロジェクト一覧

【寄付募集プロジェクトの一例】
未来の芸術家を育成する京都芸大の移転整備に御支援を!~京都市立芸術大学移転整備事業~

世界遺産・二条城本格修理事業

こころのふるさと京都の景観を次世代へ!

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