【企業版ふるさと納税コンサルタントに聞く】令和3年度大臣表彰を振り返って
2022-05-18 08:00:00
黄色い都市のイラスト

令和4年(2022)2月10日、令和3年度(2021)の企業版ふるさと納税に係る大臣表彰(以下、令和3年度大臣表彰)の表彰式が執り行われました。初めて開催された平成31年(2019)から毎年参加していますが、年を追うごとに受賞のポイントが変わってきているように感じます。制度開始から約6年、制度の認知度が高まるにつれて「どういうプロジェクトで活用すべきか」という事例から「官民連携を進めるにあたり結果的に企業版ふるさと納税を活用することが最善の選択肢だった」という事例へと表彰対象が変わったように感じます。今回は、受賞団体のプレゼンなどを引用しつつ、令和3年度大臣表彰を振り返ってみたいと思います。

(写真=令和3年度 企業版ふるさと納税に係る大臣表彰~制度の概要と表彰事例のご紹介~より)

最初に知っておきたい。「企業版ふるさと納税に係る大臣表彰」とは?

旧渋沢邸中の家主屋
(写真=令和2年度大臣表彰を受賞した埼玉県深谷市のプロジェクトで整備が進む、旧渋沢邸「中の家(なかんち)」主屋)

企業版ふるさと納税に係る大臣表彰は、「企業版ふるさと納税に関し特に顕著な功績を上げ、今後の規範となる活動を行った企業や地方公共団体に対し、内閣府特命担当大臣(地方創生)が表彰する制度」で、内閣府により平成30年度(2018)に創設されました。過去3回においては、各回ともに地方公共団体と企業を合わせて5団体ずつが受賞しており、どれもが優れた取り組みであり企業版ふるさと納税の活用促進につながるものばかりでした。

過去の受賞団体は次の通りです。

平成30年度(2018)
地方公共団体部門:岐阜県・岐阜県各務原市/岡山県玉野市
企業部門:株式会社ニトリホールディングス/株式会社アルビオン/株式会社三井E&Sホールディングス

令和元年度(2019)
地方公共団体部門:茨城県境町/群馬県下仁田町
企業部門:小松マテーレ株式会社/株式会社ディスコ/株式会社 長谷工コーポレーション

令和2年度(2020)
地方公共団体部門:埼玉県深谷市/岐阜県飛騨市/岡山県瀬戸内市
企業部門:株式会社鹿児島銀行/株式会社ホクリク

(参考)
平成30年度 受賞者の決定について
令和元年度 受賞者の決定について
令和2年度 受賞者の決定について

令和3年度(2021)の受賞団体と評価のポイント

高知県日高村の忍者のキャラクター
令和3年度(2021)の受賞団体と評価のポイントは次の通りです。
※評価のポイントは、令和3年度 受賞者の決定についてより抜粋。

地方公共団体部門
・石川県能登町…都市部の専門人材を副業人材として、人材確保に悩む事業者とマッチングを行い、地域課題の解決及び人材育成を図る事業。

・岡山県真庭市…企業版ふるさと納税(人材派遣型)の仕組みを全国で初めて活用。観光分野の専門ノウハウを有する企業人材が、コロナ禍における新たな観光振興政策の企画に従事。

・高知県日高村…役場職員や地域住民のICTリテラシーの向上を目的とした講習会を開催するとともに、防災・健康・地域通貨・メッセンジャーなどのアプリの利用促進を通じてスマホ普及率を高める取り組みを実施。

・鹿児島県大崎町…リサイクル率⽇本⼀の大崎町の取り組みを発展させ、SDGsの達成と地域の課題解決を図るため、民間企業とともに、官民連携の推進事業体として(⼀社)大崎町SDGs推進協議会を設立。

企業部門
・アステリア株式会社…5年間にわたり継続し、企業版ふるさと納税に係る寄付を実施。寄付を契機とし、寄付先の地方公共団体との対話や広報に関する勉強会を重ね新たなパートナーシップを構築。自社の強みを活かして、市職員の体温管理などのアプリを開発し無償で提供するなど、地域に貢献した取り組みを実施。

・信金中央金庫…創立70周年を記念し、信金中央金庫がSDGsを踏まえ、企業版ふるさと納税などを活用した寄付を⾏うことにより、地域の課題解決及び持続可能な社会の実現に資する地域創生事業を信用金庫とともに応援し、地域経済社会の発展に貢献することを目的として「SCBふるさと応援団」を創設。全国98の地方公共団体へ企業版ふるさと納税による寄付を実施。

・ヤフー株式会社…「カーボンニュートラル」をテーマにした寄付活用事業の公募を実施し、地方公共団体の実施する寄付活用事業を誘発。本テーマに関する寄付活用事業の公募としては国内初の取り組みであり、全国で8地方公共団体へ企業版ふるさと納税による寄付を実施。採択後も、地方公共団体の担当者との対話や伴走支援などによりフォローアップを実施。

令和3年度 企業版ふるさと納税に係る大臣表彰の取組事例についての動画

取り組みにひと工夫あり。官民連携の成功例に注目

人型のピンをつまむ様子
昨年までの受賞例では、強いリーダーシップをもつ首長と地域に思いをもつ企業との連携が成果を出していましたが、令和3年度(2021)は、官民連携を進めていて、結果的に企業版ふるさと納税を活用することが最善の選択肢となったという主旨のものが多くなったように思います。

また、今回の特徴として、企業版ふるさと納税(人材派遣型)の活用事例が受賞したことが挙げられます。人材派遣など様々な角度からの制度活用策が出るなど、従来から「進化した」取り組みが出てきています。企業は、デジタルトランスフォーメーションなど、CSRやSDGsの観点から広くマッチングをする自治体を探しており、地域公共団体側も社会のイノベーションを一緒に起こそうという姿勢が見られます。企業版ふるさと納税は、単に地方公共団体の財源獲得のためのツールを超えて、社会変革のためのツールになっていることの表れといえそうです。

「きっかけ」から「あたりまえ」に。プロジェクト価値を最大化するための活用を模索

数人で手を出し合う様子
我々が、企業版ふるさと納税を活用した地域課題解決プラットフォームriver(以下river)をサービスリリースした2020年4月の時点では、税制改正が行われたことはもちろんのこと、地方公共団体の担当部署の職員でも制度についてよく知らない方が多かったように思います。2021年4月には多くの地方公共団体に担当職員が配置され、「企業へのメリットをどうするか」という点が議論の焦点になっていました。

そしていま、企業版ふるさと納税の人材派遣型など、様々な応用編の活用が始まっています。元々あった官民連携プロジェクトの議論の流れのなかで、企業版ふるさと納税を活用したというケースが散見されるようになりました。

また最近の企業との対話のなかで、「企業版ふるさと納税にこだわらない」という声をよく聞くようになりました。つまり、地方公共団体と連携ができるのであれば、税の軽減効果のメリットがなくても一定額までなら拠出できるというのです。

企業と地方公共団体が連携した取り組みは、いまでは「あたりまえ」になりつつあります。企業版ふるさと納税は、企業と地方公共団体をつなげる「きっかけ」としての役割だけでなく、「プロジェクトの価値の最大化」のために、その活用方法が模索され始めている段階にきているように思います。

riverとしても、これまで築いてきたネットワークやノウハウを過信することなく、新たな活用方法を常に模索・提案し続け、時代に求められるプラットフォームになっていかねばならないと感じた時間となりました。
(企業版ふるさと納税コンサルタント:小坪拓也 聞き手:日下智幸)

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