世界初! 排ガスから二酸化炭素を取り出す脱炭素・資源循環による持続可能なまちづくり~佐賀県佐賀市~
2022-03-28 08:00:00
(写真)ゴミ焼却時に発生する排ガスの一部から二酸化炭素を取り出す施設の空撮写真
佐賀市では、清掃工場でのゴミ焼却時に発生する排ガスの一部から二酸化炭素を取り出し、野菜や微細藻類の成育促進に活用する世界初の取り組みにより、脱炭素・資源循環型社会の構築を目指しています。
佐賀市には清掃工場の排ガスを活用するための施設があり、世界初のこの取り組みは、ほかの自治体や日本企業だけでなく、海外メディアからも注目されているといいます。2019年スペイン・マドリードで開催された国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)では、環境省が同プロジェクトを紹介しています。
世界が注目するこのプロジェクトについて、スタートした経緯や背景から、新たに見えてきた課題、プロジェクトの進むべき方向などを改めて伺うべく、佐賀市企画調整部バイオマス産業推進課副課長の増本嘉浩さん、同部バイオマス産業推進課藻類産業推進室主任の川原田格さん、同部企画政策課企画係の本村佳介さんにお集まりいただきました。
佐賀市では、清掃工場でのゴミ焼却時に発生する排ガスの一部から二酸化炭素を取り出し、野菜や微細藻類の成育促進に活用する世界初の取り組みにより、脱炭素・資源循環型社会の構築を目指しています。
佐賀市には清掃工場の排ガスを活用するための施設があり、世界初のこの取り組みは、ほかの自治体や日本企業だけでなく、海外メディアからも注目されているといいます。2019年スペイン・マドリードで開催された国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)では、環境省が同プロジェクトを紹介しています。
世界が注目するこのプロジェクトについて、スタートした経緯や背景から、新たに見えてきた課題、プロジェクトの進むべき方向などを改めて伺うべく、佐賀市企画調整部バイオマス産業推進課副課長の増本嘉浩さん、同部バイオマス産業推進課藻類産業推進室主任の川原田格さん、同部企画政策課企画係の本村佳介さんにお集まりいただきました。
清掃工場から出る「嫌われ者」の二酸化炭素が、有効利用によって地域の役に立つ
(写真)株式会社アルビータの藻類培養槽(赤)の様子
佐賀市が展開するのは、清掃工場の焼却処理で発生する排ガスの一部から二酸化炭素のみを分離回収し、光合成で成長する野菜や微細藻類の生育促進などに活用する「二酸化炭素分離回収事業」です。世界初となる、この画期的な取り組みは、住民の素朴な声に行政が真摯に耳を傾けた結果、生まれたものでした。
「佐賀市では2005~2007年にかけて1市6町1村が合併し、同時にゴミ焼却場の統廃合も進められました。その際に問題となったのは、統合され各地域からゴミが集められる焼却場の周辺住民の理解を得ることでした。住民にとって、清掃工場はイメージ的には敬遠したい存在です。そこで市は、清掃工場から出る『嫌われ者』の二酸化炭素を、暮らしに利用し、地域の役に立つ存在として還元させようと考えたのです」。
佐賀市が展開するのは、清掃工場の焼却処理で発生する排ガスの一部から二酸化炭素のみを分離回収し、光合成で成長する野菜や微細藻類の生育促進などに活用する「二酸化炭素分離回収事業」です。世界初となる、この画期的な取り組みは、住民の素朴な声に行政が真摯に耳を傾けた結果、生まれたものでした。
「佐賀市では2005~2007年にかけて1市6町1村が合併し、同時にゴミ焼却場の統廃合も進められました。その際に問題となったのは、統合され各地域からゴミが集められる焼却場の周辺住民の理解を得ることでした。住民にとって、清掃工場はイメージ的には敬遠したい存在です。そこで市は、清掃工場から出る『嫌われ者』の二酸化炭素を、暮らしに利用し、地域の役に立つ存在として還元させようと考えたのです」。
スタートから6年。清掃工場産まれの二酸化炭素は地元産業にとってなくてはならない存在に
(写真)株式会社アルビータの藻類培養槽(緑)の様子
「活用の仕組みとしては、ゴミ焼却時に発生するガスから二酸化炭素のみを分離回収し、二酸化炭素を使う光合成によって成長する野菜や微細藻類の成育促進に活用するというものでした。試運転から始め、安定した運転ができるようになり完成したこの技術によって現在では、農業はもとより、産物の有用成分を活用したサプリメント・化粧品製造など、様々な分野で活用されています」。
「キュウリの大規模多収栽培実証施設『ゆめファーム全農SAGA』では、清掃工場から供給される二酸化炭素を利用したことで、(2020年に)10アール(1,000平方メートル)当たり55.6tという、全国平均の約4倍もの収穫量を達成し、大きな成果を上げました」。
「また、清掃工場の隣接地に進出したバイオマス企業『株式会社アルビータ(本社佐賀市)』では、二酸化炭素を使って藻類のヘマトコッカスを培養し、そこから抗酸化作用が高いとされるアスタキサンチンを抽出。サプリメントや化粧品の製造に活用しています。ほかにも、水耕栽培でバジルなどを栽培する『グリーンラボ株式会社(本社福岡市)』も、清掃工場の近隣地で開業し、バジル栽培に二酸化炭素を有効活用しています」。
「活用の仕組みとしては、ゴミ焼却時に発生するガスから二酸化炭素のみを分離回収し、二酸化炭素を使う光合成によって成長する野菜や微細藻類の成育促進に活用するというものでした。試運転から始め、安定した運転ができるようになり完成したこの技術によって現在では、農業はもとより、産物の有用成分を活用したサプリメント・化粧品製造など、様々な分野で活用されています」。
「キュウリの大規模多収栽培実証施設『ゆめファーム全農SAGA』では、清掃工場から供給される二酸化炭素を利用したことで、(2020年に)10アール(1,000平方メートル)当たり55.6tという、全国平均の約4倍もの収穫量を達成し、大きな成果を上げました」。
「また、清掃工場の隣接地に進出したバイオマス企業『株式会社アルビータ(本社佐賀市)』では、二酸化炭素を使って藻類のヘマトコッカスを培養し、そこから抗酸化作用が高いとされるアスタキサンチンを抽出。サプリメントや化粧品の製造に活用しています。ほかにも、水耕栽培でバジルなどを栽培する『グリーンラボ株式会社(本社福岡市)』も、清掃工場の近隣地で開業し、バジル栽培に二酸化炭素を有効活用しています」。
プロジェクトを世界中に広め、地球規模での脱炭素社会実現に寄与したい
(写真)グリーンラボ株式会社生産圃場の佐賀BASEでのハーブ栽培の様子
まさに驚嘆に値する仕組みを完成させたわけですが、今後の目指すべき姿について、市はどう考えているのでしょうか。
「この事業をほかの自治体に認識してもらい導入してもらうことが理想です。企業においては、成果を産み出すために、それぞれの地域特性に合った協力を行ってもらうことが重要だと考えています。それが、ひいては日本各地の活性化につながっていくと期待します」。
「このプロジェクトは、地域経済の活性化と環境保全を両立させるためのサステナブルな新しい取り組みだと考えています。国内だけでなく、世界に広め、資源として活用可能な地域の廃棄物(系バイオマス)に付加価値をつけて(アップサイクルし)循環させる、サーキュラー・バイオエコノミーを構築し、経済活動と環境保全が両立する社会の実現を目指しています」。
目的地は、まだ先にあるようです。
まさに驚嘆に値する仕組みを完成させたわけですが、今後の目指すべき姿について、市はどう考えているのでしょうか。
「この事業をほかの自治体に認識してもらい導入してもらうことが理想です。企業においては、成果を産み出すために、それぞれの地域特性に合った協力を行ってもらうことが重要だと考えています。それが、ひいては日本各地の活性化につながっていくと期待します」。
「このプロジェクトは、地域経済の活性化と環境保全を両立させるためのサステナブルな新しい取り組みだと考えています。国内だけでなく、世界に広め、資源として活用可能な地域の廃棄物(系バイオマス)に付加価値をつけて(アップサイクルし)循環させる、サーキュラー・バイオエコノミーを構築し、経済活動と環境保全が両立する社会の実現を目指しています」。
目的地は、まだ先にあるようです。
課題は市民に事業の本質を知ってもらうこと
(写真)ゆめファーム全農SAGAでのキュウリ栽培
順調そうにみえるプロジェクトですが、課題もあるようです。
「市民のなかには、この事業を、単に二酸化炭素を販売するだけの事業として捉えている方もいらっしゃいます。そのため、いまは事業発足の経緯や背景、目指すべき姿を市民の皆様に知ってもらうことにも注力しています。例えば、市内にある約30カ所の公民館で、事業について知ってもらう公開講座を予定しています」。
「なにより、企業版ふるさと納税によって寄付をしてくださる企業が増えることで、社会からも注目されているプロジェクトであることが、さらに多くの市民の皆様に伝わることを強く願っています」。
産学官が連携し、地球規模の脱炭素社会実現に向けて努力を続ける佐賀市の取り組みに関心をおもちになった企業の皆様は、ぜひ寄付・協力をご検討ください。
(オフィス・プレチーゾ 桜岡宏太郎 / 遠藤香織)
【佐賀県・佐賀市】脱炭素・資源循環による持続可能なまちづくりプロジェクト
順調そうにみえるプロジェクトですが、課題もあるようです。
「市民のなかには、この事業を、単に二酸化炭素を販売するだけの事業として捉えている方もいらっしゃいます。そのため、いまは事業発足の経緯や背景、目指すべき姿を市民の皆様に知ってもらうことにも注力しています。例えば、市内にある約30カ所の公民館で、事業について知ってもらう公開講座を予定しています」。
「なにより、企業版ふるさと納税によって寄付をしてくださる企業が増えることで、社会からも注目されているプロジェクトであることが、さらに多くの市民の皆様に伝わることを強く願っています」。
産学官が連携し、地球規模の脱炭素社会実現に向けて努力を続ける佐賀市の取り組みに関心をおもちになった企業の皆様は、ぜひ寄付・協力をご検討ください。
(オフィス・プレチーゾ 桜岡宏太郎 / 遠藤香織)
【佐賀県・佐賀市】脱炭素・資源循環による持続可能なまちづくりプロジェクト