様々な魅力で生徒たちの支持を得る「地元高校育成補助事業」のいま~徳島県海陽町~
2022-03-10 08:00:00
徳島県南部の海部郡に属する海陽町では、郡内にただひとつの徳島県立海部高校を様々な形で支援することで魅力にあふれた高校づくりを実現し、生徒数の維持・増加に結びつけてきました。
「地元高校育成補助事業」と名付けられたこの取り組みの経過を詳しく見ると、ユニークかつ魅力的な施策が、次々と行われてきたことに驚かされます。取り組みのスタートから5年ほど経ったいま、改めてその魅力的な施策の経緯を検証するとともに、海部高校はどこへ向かって進んで行くのか、補助事業のロードマップはどう想定しているのかなどを、町の担当者に伺いました。
「地元高校育成補助事業」と名付けられたこの取り組みの経過を詳しく見ると、ユニークかつ魅力的な施策が、次々と行われてきたことに驚かされます。取り組みのスタートから5年ほど経ったいま、改めてその魅力的な施策の経緯を検証するとともに、海部高校はどこへ向かって進んで行くのか、補助事業のロードマップはどう想定しているのかなどを、町の担当者に伺いました。
高校の定員割れを防ぐ目的で始まった補助金事業
地元高校育成補助事業は、どのようなきっかけで始まったのでしょうか。その経緯などを、海陽町教育委員会事務局主査の大久保憲さんに伺いました。
「きっかけは入学者の定員割です。2016年の入学者は、定員を30人以上割り込む100人以下になり、この状態が続くと専科の教員が減らされてしまうとの当時の校長からの相談を受け、町が補助することを決めたのです」。
「もし高校が廃校すれば、子どもの高校進学に合わせて家族で町を出ることも考えられ、人口減少に歯止めがきかなくなる。それは絶対に避けたい思いで補助金を出しています。ただ、お金を出すからには成果が必要です。そこで町と学校が話し、いろいろなアイデア、施策が生まれてきたのです」。
今、当初の目的である生徒数確保は実現できているのでしょうか。
「2019年以降の入学者は99、97、105名と、教育委員会が一定の成果があると考える100名前後で推移しています」。
「きっかけは入学者の定員割です。2016年の入学者は、定員を30人以上割り込む100人以下になり、この状態が続くと専科の教員が減らされてしまうとの当時の校長からの相談を受け、町が補助することを決めたのです」。
「もし高校が廃校すれば、子どもの高校進学に合わせて家族で町を出ることも考えられ、人口減少に歯止めがきかなくなる。それは絶対に避けたい思いで補助金を出しています。ただ、お金を出すからには成果が必要です。そこで町と学校が話し、いろいろなアイデア、施策が生まれてきたのです」。
今、当初の目的である生徒数確保は実現できているのでしょうか。
「2019年以降の入学者は99、97、105名と、教育委員会が一定の成果があると考える100名前後で推移しています」。
充実した進学先は海部高校の魅力のひとつ
入学生確保の要因は町外からの入学者だと、町は考えているようです。
「現在海陽町内には2つの中学校があります。2019年度に高校を受験できる生徒は2つの中学校合わせて75名でした。2020年度は69名、2021年度は57名で、町内の生徒だけでは100名近くにはなりません。一方2019年度に入学された郡外からの生徒数は24人、2020年度が32人、2021年は40名と着実に上がっています」。
郡外からの入学生は、どこをポイントに海部高校を選択したのでしょうか。
「ひとつは、卒業後の進学先を評価されているのだと思います。2020年度の進学先を見ると、大阪府立大、広島大をはじめ12人が国公立に進み、前年度も13人が国公立進学です。青山学院大や関西学院大、同志社大など有名私立へも多くの進学が決まっており、海部高校に行けば国公立や有名私大を狙えると認知されたことが、大きな要因だと考えています。そして進学先の充実にともない、2021年度は大阪府4名、東京都2名、兵庫県、香川県や、遠く宮城県、熊本県などからの入学生も増加しているのです」。
「現在海陽町内には2つの中学校があります。2019年度に高校を受験できる生徒は2つの中学校合わせて75名でした。2020年度は69名、2021年度は57名で、町内の生徒だけでは100名近くにはなりません。一方2019年度に入学された郡外からの生徒数は24人、2020年度が32人、2021年は40名と着実に上がっています」。
郡外からの入学生は、どこをポイントに海部高校を選択したのでしょうか。
「ひとつは、卒業後の進学先を評価されているのだと思います。2020年度の進学先を見ると、大阪府立大、広島大をはじめ12人が国公立に進み、前年度も13人が国公立進学です。青山学院大や関西学院大、同志社大など有名私立へも多くの進学が決まっており、海部高校に行けば国公立や有名私大を狙えると認知されたことが、大きな要因だと考えています。そして進学先の充実にともない、2021年度は大阪府4名、東京都2名、兵庫県、香川県や、遠く宮城県、熊本県などからの入学生も増加しているのです」。
スポーツでも英会話学習でも生徒の満足度を高める
県外、郡外からの生徒が集まる理由は、ほかにもあるようです。
「男子バスケットボール部は県大会で連続優勝する強豪です。高校運動部の育成強化を目的に県が導入した『NEO徳島トップスポーツ校強化事業』の強化指定を受けていることで、強化費の助成と、町外の優秀な人材の推薦入試枠が得られています。また、駿台サテネット21という、駿台予備校の映像講座を受けられるという施策も、効果が高いと考えています。精鋭講師陣によるハイレベルな授業を、放課後や土曜日、長期休業期間中など、必要なときに無理なくパソコンで受講することができるもので、生徒が負担する費用もテキスト代だけです。ほかにも、ネイティブな英会話を学べるオンライン英会話を導入したことで、実践力が身につき、英検二次試験の合格率は86~100%という成果を上げ、3年連続で奨励賞を受賞するなど、学力の向上は著しいものがあります」。
充実した英会話授業を目的に入学する生徒たちも多く、海外短期留学のシステムがあることも、入学希望者を増やす要素になっているようです。
「卒業後に、アメリカのカレッジへ留学できる仕組みも計画しています」。
「男子バスケットボール部は県大会で連続優勝する強豪です。高校運動部の育成強化を目的に県が導入した『NEO徳島トップスポーツ校強化事業』の強化指定を受けていることで、強化費の助成と、町外の優秀な人材の推薦入試枠が得られています。また、駿台サテネット21という、駿台予備校の映像講座を受けられるという施策も、効果が高いと考えています。精鋭講師陣によるハイレベルな授業を、放課後や土曜日、長期休業期間中など、必要なときに無理なくパソコンで受講することができるもので、生徒が負担する費用もテキスト代だけです。ほかにも、ネイティブな英会話を学べるオンライン英会話を導入したことで、実践力が身につき、英検二次試験の合格率は86~100%という成果を上げ、3年連続で奨励賞を受賞するなど、学力の向上は著しいものがあります」。
充実した英会話授業を目的に入学する生徒たちも多く、海外短期留学のシステムがあることも、入学希望者を増やす要素になっているようです。
「卒業後に、アメリカのカレッジへ留学できる仕組みも計画しています」。
独創性を重視する取り組みから見えてきた課題
次々と独創的な取り組みを生むその原動力を、大久保さんが教えてくれました。
「町長からはいつも『どこでもやっている施策は要らない。特色があって、効果のある施策を行うように』といわれています。補助金額に合わせたような策ではなく、効果優先で施策を吟味して取り組んでいます」。
「まち親制度」やNPOと協力して土・日曜や長期休暇中の食事の世話をする「おばちゃんのウチごはん」など、親元を離れ各地から入学する生徒を支援する取り組みを次々に実行してきた海陽町だけに、次の一手もすでに計画しているようです。
「今後も県外からの入学者増が予想されるなか、寮に入れない生徒、女子生徒への対応は急務です。新しく寮を建てるのは資金的に難しいため、寮以外の場所を検討しています。寮と下宿などの利用金額を同じにする補助も課題です」。
最後に、寄付についての思いを伺いました。
「子どもたちのためにも、企業様にはぜひ力を貸していただきたいと思います。役所には浮かばないアイデアも、ぜひいろいろ教えてください」。
寄付金の使い方については、経営戦略課主幹の岩佐敦子さんが教えてくれました。「海部高校支援事業(地元高校育成補助事業)としてすでに取り組んでいる全ての事業に充当する方針です。未来を担う子どもたちのため、企業版ふるさと納税をご検討ください」。
(オフィス・プレチーゾ 桜岡宏太郎)
【徳島県・海陽町】郡内唯一の高校を応援し、町の活性化につなげる
「町長からはいつも『どこでもやっている施策は要らない。特色があって、効果のある施策を行うように』といわれています。補助金額に合わせたような策ではなく、効果優先で施策を吟味して取り組んでいます」。
「まち親制度」やNPOと協力して土・日曜や長期休暇中の食事の世話をする「おばちゃんのウチごはん」など、親元を離れ各地から入学する生徒を支援する取り組みを次々に実行してきた海陽町だけに、次の一手もすでに計画しているようです。
「今後も県外からの入学者増が予想されるなか、寮に入れない生徒、女子生徒への対応は急務です。新しく寮を建てるのは資金的に難しいため、寮以外の場所を検討しています。寮と下宿などの利用金額を同じにする補助も課題です」。
最後に、寄付についての思いを伺いました。
「子どもたちのためにも、企業様にはぜひ力を貸していただきたいと思います。役所には浮かばないアイデアも、ぜひいろいろ教えてください」。
寄付金の使い方については、経営戦略課主幹の岩佐敦子さんが教えてくれました。「海部高校支援事業(地元高校育成補助事業)としてすでに取り組んでいる全ての事業に充当する方針です。未来を担う子どもたちのため、企業版ふるさと納税をご検討ください」。
(オフィス・プレチーゾ 桜岡宏太郎)
【徳島県・海陽町】郡内唯一の高校を応援し、町の活性化につなげる