地域に自生する竹を資源として活用し、新たな価値を見いだすコト・モノづくり。熊本県・南関町
2022-03-04 08:00:00
南関町役場正面

日本では、古くから竹を食用や日用品、飼料、建築材などに幅広く利用してきました。竹の産地で知られる熊本県南関町でも、竹に関連する産業は盛んでした。しかし、高度経済成長期を経て、安価な外国産竹材の輸入が増加し、また様々なプラスチック製品が登場したことで竹の需要は激減。管理されなくなった各地の竹林は、次第に処理にも苦心する存在となってしまいました。

熊本県南関町では、里山のある美しい環境を守るべく、竹の有効活用を模索するなかで竹に新たな価値を見いだし、資源とするプロジェクトを立ち上げ、企業版ふるさと納税の対象事業にしました。今、このプロジェクトはどのくらい進んでいるのか。また、次への展開はどう考えているのかなどを、南関町役場の担当者に聞いてみました。

民間と進める、竹あかりイベント

竹あかりイベントの様子
「町では長年、放置竹林の問題に取り組んでいます」と話すのは、南関町まちづくり課の大森敏和さんです。

「町内では、農業用資材やバイオマスエネルギーの燃料とするために竹チップなどに加工する会社、竹箸を製造・販売する会社、タケノコの生産農家など、竹を活用する業者や生産者がたくさん活動されています。そこで町では、竹材利用拡大補助金の創設など、放置竹林の整備につながる様々な支援を行っています。また2021年には、竹あかり(穴や切り込みで模様をつけた、幻想的な竹製の灯り)のフォトコンテストを、南関町にある竹あかり総合プロデュース集団・株式会社ちかけんプロダクツと連携して開催しました。観光施設や公園などに設置した竹あかりの美しさにふれることで、放置竹林やその利用に関心をもってもらう目的で企画したイベントです」。

恐ろしい竹害を招かないためにも重要な放置竹林対策

放置竹林の様子
ところで、そもそも竹を放置しているとどのような問題が起きるのでしょうか。
「南関町は全面積の約半分が山林で、そのうち約20%が竹林だといわれています。竹は繁殖力、成長力がとても強く、5年で成育するため放置すればすぐに杉や栗の林に侵入します。人の手が入らなくなった森はさらに管理が難しくなり、やがてイノシシや鹿、アナグマ、タヌキといった害獣が増えてしまうのです。また竹は地下茎で、地面に根ざす部分が少ない反面、地上に出る部分が長く、重くなります。大雨が降れば竹は流され、それが誘因となって土砂崩れを起こしやすいといわれています」。

町では放置竹林を減らし、竹を活用する方策として、新しい竹製品の開発、竹をテーマにしたカフェの運営、竹製遊具の設置などを目標に掲げていました。「寄付があればやっていきたいと考えていたアイデアですが、予算を組めていないこともあって、今のところ実現していません」。

環境を守るカーボンニュートラルやSDGsとともに…

竹を磨く様子
今後は竹問題にどう取り組んでいくのかを、大森さんに聞いてみました。

「現在、町では竹のプロジェクトをSDGsやカーボンニュートラルを実現する取り組みと併せるかたちで進めています。そのひとつが2022年1月に開庁した南関町新庁舎です。閉校した旧県立南関高校を県から無償で譲り受け、校舎だった建物を庁舎に改修、加えて木造2階建ての庁舎を新築しています。新築の庁舎には南関産の杉のほか熊本県産の杉、檜も使用しました。鉄骨造ではなく木造にしたことで、二酸化炭素の排出量・固定量合わせて629.4tの削減効果がありました。これは、一般のガソリン車(燃費値10km/L)が地球を約68周した時の排出量に匹敵します」。

「南関町は、環境省が進める『できることから、脱炭素社会づくりに貢献する行動をしよう』とする取り組みCOOL CHOICEに賛同し、カーボンニュートラルやSDGsに積極的に取り組んでいます。家庭から出る食用油を回収・精製して車のエネルギーにする取り組みや、家庭用薪ストーブやペレットストーブ、太陽熱温水器の購入補助なども行い、町全体でCOOL CHOICEに取り組んでいます」。

「人と自然にやさしい、身近にある資源やエネルギーを見直すことから脱炭素社会の実現につなげていこうとする町のプロジェクトにぜひ注目していただき、取り組みを継続・発展させるために協力していただければ助かります」。

寄付金は、補助金事業の原資などに充てる予定です

竹をトラックに積んでいる様子
ふるさとコネクトで寄付を募集している竹のプロジェクトについては、どのような施策を考えているのでしょうか。

「竹林の整備につなげるために、竹の買い取り金額に補助金を出しています。通常竹の買い取りは、山の持ち主が竹を伐採して、買い取り業者に持ち込むという流れで行われます。そこで、町内の業者が通常1kg6円で買い取るところに町が4円を補助することで、都合10円で買い取れるようにしています。孫にお年玉をあげるために竹を切ったなど、所有する竹を(通常より高く)現金化できることで地元住民にも評価されている制度です。ただ、厳しい町の財政に代わって、企業版ふるさと納税で支援していただいた寄付金を買取補助金の原資にして、この制度を今後も維持していきたいと考えています」。
「放置竹林の整備が進み、今までは地域の厄介者と思われていた竹が資源として活用できる、自分たちの財産となるという意識が根付けば、新たなステージに移っていくことが可能になると考えています」。

南関町では、SDGsやカーボンニュートラルの実現につなげるため、様々な施策を包括的に進めているようです。その代表的な取り組みが、ふるさとコネクトで寄付を募集している、竹を資源として活用するプロジェクトです。町に関わるすべての人々が資源を大切にし環境を守ろうと取り組む、南関町の今と未来に関心をお持ちになった担当の方は、ぜひ寄付をご検討ください。
(オフィス・プレチーゾ 桜岡宏太郎)

【熊本県・南関町】地域に自生する竹を資源として活用し、新たな価値を見いだすコト・モノづくり