【企業版ふるさと納税コンサルタントに聞く】どこまでならOK? 経済的利益の供与について考える
2022-01-11 08:00:00
小さなギフトボックスを両手で差し出す様子

2021年に、内閣府の「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業に関するQ&A」が改訂されています。そこで、企業版ふるさと納税を活用して自治体に寄付をした場合、この寄付の代償として受けられる様々な利益についての決まり事はどうなっているのかを、2回にわたって紹介していきます。寄付を検討する際には確認しておきたいことばかりですので、ぜひ参考にしてください。

Q&Aが改訂された理由とは…

小さなギフトボックスの後ろで握手しているシーン
まず、今回の改定の目的ですが、内閣府の担当者が説明した際の内容によると、「経済的便益の供与に関する制度上の禁止事項に該当するリスクを踏まえて、企業が寄付を見送ってしまう事例を減らすこと」にあります。

これに民間視点の解釈を加えると、「寄付」という行為と、「経済的便益の供与」というふたつの行為が、相互に必然性を伴って(必ずそうなるように予め決まって)いなければ、制度上問題ないということが明記されたと解釈できます。
例えば、
・すでに契約関係のある企業からの寄付は問題なし。
・寄付後に関しても、公平な公募形式を踏んでいれば入札しても問題なし。
ということです。
「寄附を行うことの代償として経済的な利益を供与すること」等に係るQ&Aの構成リスト
企業版ふるさと納税ポータルサイト「寄附を行うことの代償として経済的な利益を供与すること」に係るQ&Aの構成

次に具体的な内容について見ていきますが、まずは、これから紹介する各Q&Aの構成を上に表しましたので確認してください。

Q&Aの全体はこちら。

まち・ひと・しごと創生寄附活用事業に関するQ&A(第10版)〔事業実施・実施状況報告編〕

経済的利益の供与における禁止令について

Q&A文章 Q&A文章
まず、経済的便益の供与に関わる禁止令について説明します。
寄付を行った代償としての経済的利益の供与として禁止されていることの要約は、次の項目です。

1.補助金の交付
2.他の企業より低い金利での貸付
3.入札時や、許認可に関わることで、特別に便宜を図ること
4.財産を、合理的な理由もなく、市場価格より低い価格で譲ること
5.商品券やプリペイドカードなど換金性が高い商品を渡すこと
6.寄付しなければ入札に参加できないようにすること
7.企業版ふるさと納税でできた施設を独占的に使用させること

改めて確認すると、社会通念上(一般の常識的に)許されない事柄だと解釈できます。なお、これらに反した場合、自治体は企業版ふるさと納税の利用ができなくなったり制限されたりする措置がとられることになり、自治体にとっては大きなマイナスとなります。
また、企業がこれらを求めることは、社会的制裁を受ける可能性もありますので、くれぐれも注意が必要です。

経済的利益の供与における許容例について

Q&A文章
一方、寄付の代償として許容される利益供与とは、どのようなものなのでしょうか。内閣府のQ&Aには、次の項目(要約)が代償として認められる利益供与に挙げられています。

1.感謝状やそれに類するものを贈ること
2.HPや自治体便り、広報番組などで寄付活用事業を取り上げる際に、寄付企業の名前をほかの寄付者と並べて紹介すること
3.寄付によってできた施設などに、寄付企業の名前を他の寄付者と並べて表示すること
4.社会通念上、許される範囲の記念品などを贈ること

寄付行為によって、企業名を広く住民に知ってもらうことは充分可能ということになります。

ところで、この企業名を知らしめるベネフィットとして興味深い例があります。北海道上富良野町の取り組みがそれです。
上富良野町は、企業版ふるさと納税を活用した映画製作の取り組みを進めていますが、そのベネフィットのひとつに「全国公開映画のエンドロールに社名を掲載いたします」とあります。全国公開予定の映画だけに、高い宣伝効果が想定されますが、これも「認められる利益供与」にあたることになります。

【北海道・上富良野町】十勝岳噴火からの復興を描く『泥流地帯』映画化プロジェクト

ここまで、寄付を行った企業が自治体から受ける代償としての経済的な利益の供与について、どのようなものが禁止され、どのようなものなら許されるのかを見てきました。

第2回では、「契約」「ネーミングライツ」「施設などの利用」というそれぞれの項目についての経済的利益の供与の考え方を紹介したいと思います。
(企業版ふるさと納税コンサルタント 小坪拓也)