農業はじめましてでもここで学べば農業を生業にできる
兵庫県丹波市「農(みのり)の学校」
2021-11-22 08:00:00
農業の担い手不足は、日本中の地域が抱える課題です。農村文化の色濃い兵庫県丹波市でも農業の担い手は減少傾向にあり、休耕地や耕作放棄地も少なくありません。そんななか期待されるのが、農業への思いを秘めながらも農業と接点がなかった新規就農希望者を担い手として地域に迎え入れることです。しかし、技術や知識がなく地域との関わりもない新規就農希望者は、熱意があっても地域に定着して農業を続けていくことは困難でした。
こうした課題に挑んでいるのが、丹波市立「農(みのり)の学校」です。農の学校では、「見て学べ」ではない体系的カリキュラムや、地域との協調を学ぶ地域学習によって、「農業はじめまして」の未経験者でも、地域に根付いて農業を生業として続けていく力を養うことができます。2019年に開校してからこれまで2年間で全国から受講生が集まり、卒業した25名のうち、14名が丹波市内で農業を開始。新規就農者の定着を実現させています。
こうした課題に挑んでいるのが、丹波市立「農(みのり)の学校」です。農の学校では、「見て学べ」ではない体系的カリキュラムや、地域との協調を学ぶ地域学習によって、「農業はじめまして」の未経験者でも、地域に根付いて農業を生業として続けていく力を養うことができます。2019年に開校してからこれまで2年間で全国から受講生が集まり、卒業した25名のうち、14名が丹波市内で農業を開始。新規就農者の定着を実現させています。
データの裏付けで職人技に頼らない農業を学修
「農家さんは『見て学べ』という感じで、人に教えるのが苦手な方が多い。新規参入の人は教えてもらおうにもどうしたらよいかわからないという状況がありました」。立ち上げ前から農の学校に関わってきた丹波市職員の寺内みなみさんは、多くの新規就農者を見てきた経験から、新規就農希望者の定着に課題があったと振り返ります。
家と生業が紐付いていたこれまでの時代、多くの農家が代々その土地で生きてきた経験則を裏付けに農業を続けてきました。そうしたノウハウは体に染み付いたものであり、言語化して伝えにくく再現性がありません。農の学校では、こうした職人技ともいうべきノウハウを誰もが理解できるところまで分解して見える化。体系的なカリキュラムとして学ぶことができます。
家と生業が紐付いていたこれまでの時代、多くの農家が代々その土地で生きてきた経験則を裏付けに農業を続けてきました。そうしたノウハウは体に染み付いたものであり、言語化して伝えにくく再現性がありません。農の学校では、こうした職人技ともいうべきノウハウを誰もが理解できるところまで分解して見える化。体系的なカリキュラムとして学ぶことができます。
誰もが職人技を再現できるようにするため、データを活用した農業を実践するのも特徴です。栽培記録、気象情報、農産物のデータを日々受講生が記録。それらを分析して今後の作付け計画を立てるなど、データの裏付けによる合理的な農業を学びます。効率がよく再現性が高いノウハウを学ぶことで、受講生はたとえ新規参入であっても農業を生業として続けられる力を身につけていきます。
農業は地域との関わりなしで成り立たない。地域に根ざすための地域学習
農の学校では、地域の農家を講師として招いたり、農業に限らず丹波市の第2次産業、第3次産業の現場を視察するなど、丹波市のことを掘り下げて学ぶ地域学習に力を入れています。地域の人と協同で水や農地周辺の土地を管理する必要があるため、農村での農業は自分の土地を管理して作物を作っているだけでは成り立ちません。地域のことを知り、コミュニティとの関係を大事にすることは、新規就農者にとっては自らの実利に関わる重要な要素なのです。
農の学校に集まってくる受講生は、それまで都市部で生活していてまったく農業に関わりがなかった若者が多いといいます。彼らにとって、地域との関わりのなかで生きていくことは経験がなく、場合によっては技術や知識を身につけることよりも難しいことかもしれません。だからこそ農の学校では、農業を生業にするための実践的カリキュラムのなかに地域学習を位置づけているのです。
関わりのなかで影響しあい変化する若者と地域の人たち
農の学校は全日制で、受講生は1年間学校に通います。春に入学して夏を過ぎるころには相当の技術と知識を身につける受講生たち。しかし彼らの変化はそれだけではないと寺内さんは言います。「最初は血色がよくない受講生が多いのですが、数ヵ月で顔つきが元気になったり、やさしくなってきます」。土地に向き合い、地域やそこに生きる人たちと関わるなかで、受講生は新たな自分を発見し、生きる実感を取り戻していくのです。
外から若者が入ってくることで、地域にも変化が起きています。「これまで人を雇用するという考えがなかった地域の農家さんも卒業生を従業員として雇用し始めています。人を雇って農業経営を行うという意識が芽生えた農家さんは少なくありません」と、寺内さん。若者との関わりのなかで、地域の人たちが刺激を受けてこれまでの意識が変わり始めたのを感じているそうです。
農の学校の取り組みは、地域に新規就農者を増やすということ以外にも、若者と地域の人たち、それぞれが抱えていた課題を解決していくきっかけにもなっているのです。
農の学校の取り組みは、地域に新規就農者を増やすということ以外にも、若者と地域の人たち、それぞれが抱えていた課題を解決していくきっかけにもなっているのです。
「あの子、きちんとやっとるで」。地域の担い手になっていく卒業生
農の学校の卒業生は丹波市や他の地域で新規就農、雇用就農をします。市では、市内で就農する卒業生に対して農地を紹介したり、市内の認定農業者につないだりと、地域で定着できるように支援をしています。
「あの子、きちんとやっとるで」。地域の人から卒業生が頑張っていることを伝えられると、この取り組みの意義を改めて確認できてうれしくなるという寺内さん。「地域の人が卒業生の頑張りを見ていて、『あの子に自分の農地を貸してあげようか』という話をくださることも少なくありません。地域とうまく行っていなかったら地域の人はそういうふうには言ってくれないはずです」。2019年に学校が開校してからこれまで2年間で25名の若者が卒業し、そのうち14名が丹波市内で農業を開始。新規就農者の定着を実現させています。
「あの子、きちんとやっとるで」。地域の人から卒業生が頑張っていることを伝えられると、この取り組みの意義を改めて確認できてうれしくなるという寺内さん。「地域の人が卒業生の頑張りを見ていて、『あの子に自分の農地を貸してあげようか』という話をくださることも少なくありません。地域とうまく行っていなかったら地域の人はそういうふうには言ってくれないはずです」。2019年に学校が開校してからこれまで2年間で25名の若者が卒業し、そのうち14名が丹波市内で農業を開始。新規就農者の定着を実現させています。
農の学校は、有機農業実践者として有名な山下一穂氏が立ち上げ前から関わっており、氏が掲げた「田舎からの国づくり」という思いに通じるところがあります。農業を若者の生業にし、農村地域を若者が定着できる場にしている農の学校は、日本中のあらゆる地域が抱える課題に解決のヒントを示しており、まさに田舎からの国づくりを実践している取り組みなのではないでしょうか。
企業からの寄付金は、ICTを活用したスマート農業など受講生のよりよい学びにつながる機能拡充に充てられています。市では、寄付企業の思いを汲んだ使い方になるよう、具体的な活用方法を検討しているそうです。
【兵庫県・丹波市】丹波市立農(みのり)の学校の運営
企業からの寄付金は、ICTを活用したスマート農業など受講生のよりよい学びにつながる機能拡充に充てられています。市では、寄付企業の思いを汲んだ使い方になるよう、具体的な活用方法を検討しているそうです。
【兵庫県・丹波市】丹波市立農(みのり)の学校の運営