成功の鍵はユイの精神。過疎の町・鹿児島県天城町が進める自立型まちづくりプロジェクト
2022-09-28 08:00:00
奄美群島中央部に位置する徳之島。その西側の半分ほどを占めるまちが、今回プロジェクトを取り上げる鹿児島県天城町です。2021年7月に登録された世界自然遺産の一部でもあり、町内には手つかずの自然が広がります。
一方では、多くの地方自治体と同様に人口減少対策が課題で、まちでは、“元気な過疎のまち”を目指し、明るい将来を見据えたまちづくりを進めています。
その施策のひとつが、企業版ふるさと納税の寄付対象事業として取り組んでいる「町民が主役の自立型まちづくり 教育と文化の町プロジェクト」です。
奄美・沖縄地方に生きる、人々が助け合い、協力して生きていく“ユイの精神”を活かし、住民の手による自治を進めることを推進する、この教育・文化に関する事業の進捗状況などについて、まちの担当者に伺いました。
オンラインで参加してくれたのは、天城町教育委員会社会教育課長の和田智磯さん、同教育委員会社会教育課主事の富山剛士さんと、同企画財政課ふるさと創生室主任の中水翔午さんです。
一方では、多くの地方自治体と同様に人口減少対策が課題で、まちでは、“元気な過疎のまち”を目指し、明るい将来を見据えたまちづくりを進めています。
その施策のひとつが、企業版ふるさと納税の寄付対象事業として取り組んでいる「町民が主役の自立型まちづくり 教育と文化の町プロジェクト」です。
奄美・沖縄地方に生きる、人々が助け合い、協力して生きていく“ユイの精神”を活かし、住民の手による自治を進めることを推進する、この教育・文化に関する事業の進捗状況などについて、まちの担当者に伺いました。
オンラインで参加してくれたのは、天城町教育委員会社会教育課長の和田智磯さん、同教育委員会社会教育課主事の富山剛士さんと、同企画財政課ふるさと創生室主任の中水翔午さんです。
花いっぱいフラワーロード運動が呼び覚ますユイの精神
まずは「町民が主役の自立型まちづくり 教育と文化の町プロジェクト」(以下、自立型まちづくりプロジェクト)の概要について、中水さんに伺います。
「天城町は北部、中部、南部、西阿木名(にしあぎな)の4地域に分けられ、各地域では行政主導ではなく、住民主体のまちづくりが行われてきた歴史があります。自立型まちづくりプロジェクトは、この特徴を活かす取り組みです」。
和田さんが続けます。
「天城町では人口減少が進み、2010年から2021年までの11年間で1,000人近く減少しています。すべての集落で、10年前と比べて平均年齢が上昇していることもわかっています。そこで町は“賑やかな過疎”という目標を掲げ、人口は少なくとも元気があって暮らしやすいまちを目指し、地域住民と行政が連携協働する自立型まちづくりプロジェクトを進めています。花いっぱいフラワーロード運動という花植え運動もそのひとつです」。
「天城町は北部、中部、南部、西阿木名(にしあぎな)の4地域に分けられ、各地域では行政主導ではなく、住民主体のまちづくりが行われてきた歴史があります。自立型まちづくりプロジェクトは、この特徴を活かす取り組みです」。
和田さんが続けます。
「天城町では人口減少が進み、2010年から2021年までの11年間で1,000人近く減少しています。すべての集落で、10年前と比べて平均年齢が上昇していることもわかっています。そこで町は“賑やかな過疎”という目標を掲げ、人口は少なくとも元気があって暮らしやすいまちを目指し、地域住民と行政が連携協働する自立型まちづくりプロジェクトを進めています。花いっぱいフラワーロード運動という花植え運動もそのひとつです」。
(写真)お話をお聞かせくださった皆さん。左から和田さん、富山さん、中水さん
実は、過去には同様の活動が行われていたと和田さんはいいます。
「以前の活動が途絶えたあと、まちに活気がなくなってきたこともあり、もう一度、徳之島に伝わるユイの精神、助け合いのこころ、地域のつながりを取り戻そうと今回のプロジェクトを始めました。1年ほど経ったいまでは、住民の皆さんも積極的に参加してくださり、花の種類を増やしたい、新しく花壇をつくりたいといった、意見もどんどん出るようになりました」。
実は、過去には同様の活動が行われていたと和田さんはいいます。
「以前の活動が途絶えたあと、まちに活気がなくなってきたこともあり、もう一度、徳之島に伝わるユイの精神、助け合いのこころ、地域のつながりを取り戻そうと今回のプロジェクトを始めました。1年ほど経ったいまでは、住民の皆さんも積極的に参加してくださり、花の種類を増やしたい、新しく花壇をつくりたいといった、意見もどんどん出るようになりました」。
寄付は、行政だけではできないことを可能にする
まちでは、特に子どもたちへの取り組みについて、寄付金を有効活用する方針を立てています。具体的にはどのように活用する計画か、和田さんに聞きました。
「地域みんなで子どもを育てる方針のもと、ある地域では田植えの体験活動を行っています。苗を植え、育て、刈り取って、できあがったもち米でお餅をつくるまでを体験しています。一方で田植え体験をさせたくても田んぼがなく、田んぼをつくるためには水を引かなくてはならないけれども、その予算も足りず、体験させてやれない地域もあります。企業さんにご支援いただけたら、その寄付金で、すべての子どもたちに田植えを体験させてあげたいと思っています」。
「地域みんなで子どもを育てる方針のもと、ある地域では田植えの体験活動を行っています。苗を植え、育て、刈り取って、できあがったもち米でお餅をつくるまでを体験しています。一方で田植え体験をさせたくても田んぼがなく、田んぼをつくるためには水を引かなくてはならないけれども、その予算も足りず、体験させてやれない地域もあります。企業さんにご支援いただけたら、その寄付金で、すべての子どもたちに田植えを体験させてあげたいと思っています」。
いただいた寄付金は、住民の意思で広く活用する
天城町では各地域の住民がまちづくりを話し合い、住民が率先して施策に取り組んでいます。それを可能としているのは、教育・文化系プロジェクトなら、天城町教育文化推進会議の下に、北部地区推進協議会、中部地区推進協議会、南部地区推進協議会、西阿木名地区推進協議会という、区長、行政、自治、文化、学校・保護者、健康福祉、事業者などあらゆるカテゴリーのメンバーが参加する地域組織が入る仕組みが整備されていることも大きいようです。
では、寄付金が使われる流れはどうなるか、中水さんに伺いました。
「田植え体験のようにそれぞれの地区から新たな要望が上がっても、予算外の事業は簡単に行うことができません。しかし寄付金をいただければ、各地区に追加の予算を配分して、実行できなかった事業を行うことができると考えています。また、天城町の各学校もそれぞれの地区推進協議会に属しているため、学校が必要な予算を、各地区と連携して支出することも可能になると考えられます」。
では、寄付金が使われる流れはどうなるか、中水さんに伺いました。
「田植え体験のようにそれぞれの地区から新たな要望が上がっても、予算外の事業は簡単に行うことができません。しかし寄付金をいただければ、各地区に追加の予算を配分して、実行できなかった事業を行うことができると考えています。また、天城町の各学校もそれぞれの地区推進協議会に属しているため、学校が必要な予算を、各地区と連携して支出することも可能になると考えられます」。
「まちには世界自然遺産のアマミノクロウサギが棲息しており、ロードキル(道路上で起こる野生動物の死亡事故)をなくすことが課題です。なにか対策はないか住民に投げかけたところ、早速地区の子ども会と住民が、ロードキル対策の手作り看板の設置や、アマミノクロウサギの飛び出しを防ぐ防護ネットの設置など、地域主導で取り組んでいただきました」と和田さんがいう世界自然遺産に関する取り組みも、寄付金でスムーズに対応することが可能です。
思い合って、助け合って生きる精神
天城町ではこれまでも、住民主導のまちづくりが行われてきました。それがごく自然なカタチで実現してきたのは、和田さんが「ひと言でいうと思いやりと助け合いの精神」だというユイの精神が、人々の心にあるからなのでしょう。
このユイの精神が地域に浸透した経緯などを、中水さんが解説してくれました。
「薩摩藩に占領された歴史や、アメリカに占領された経験など、様々な背景があって、沖縄を含めた奄美群島以南の地域で、根づいた精神だと考えられます。いまと比べて環境的にも厳しい時代には、台風や食物難など、みんなで助け合わないと生きていくのが大変な状況が、この島々にはあったのです。困っている人がいると助けようと率先して行動するユイの精神は、いまも残っています」。
このユイの精神が地域に浸透した経緯などを、中水さんが解説してくれました。
「薩摩藩に占領された歴史や、アメリカに占領された経験など、様々な背景があって、沖縄を含めた奄美群島以南の地域で、根づいた精神だと考えられます。いまと比べて環境的にも厳しい時代には、台風や食物難など、みんなで助け合わないと生きていくのが大変な状況が、この島々にはあったのです。困っている人がいると助けようと率先して行動するユイの精神は、いまも残っています」。
(写真)犬の門蓋にあるメガネ岩からの絶景
和田さんは、自身の体験談を絡めて話します。
「小さい時に親から聞いた話ですが、以前は、サトウキビの刈り入れ時季になると、隣近所の人が報酬なしで刈り入れのお手伝いをしたといいます。いまではハーベスター(収穫用機械)を使うため、そういった光景が見られなくなってしまったことも、ユイの精神を改めて思い出させる活動を始めた理由です」。
和田さんは、自身の体験談を絡めて話します。
「小さい時に親から聞いた話ですが、以前は、サトウキビの刈り入れ時季になると、隣近所の人が報酬なしで刈り入れのお手伝いをしたといいます。いまではハーベスター(収穫用機械)を使うため、そういった光景が見られなくなってしまったことも、ユイの精神を改めて思い出させる活動を始めた理由です」。
人々が惹かれる、誰もいない、でも温かい過疎のまち
「住みやすいまち、住み心地の良いまち、心が豊かになるまちをつくるのが、この取り組みの目的のひとつです。まちが住みやすければ、住んで良かったと思える人を増やすことにもつながるはずです」と、中水さんは自立型まちづくりプロジェクトがまちに与える効果を教えてくれました。
続いて和田さんが話します。
「まずは住みやすくて賑やかな過疎をつくりたいと考えています。実際、私たちが目指す賑やかな過疎を評価して、移住される方もいらっしゃいます。町長がよくいう、“子育てしやすい町”“住んでよかった天城町”を目指しています」。
元気で賑やかな過疎を目指す天城町では、今後の活動のなかにも、期待される取り組みがあるようです。富山さんが明かしてくれました。
「北部地区では、2021年に世界自然遺産に登録されたことをきっかけに、関連する活動に力を入れています。世界自然遺産を巡る『天城岳松原登山道登山』といった計画も進めています」。
続いて和田さんが話します。
「まずは住みやすくて賑やかな過疎をつくりたいと考えています。実際、私たちが目指す賑やかな過疎を評価して、移住される方もいらっしゃいます。町長がよくいう、“子育てしやすい町”“住んでよかった天城町”を目指しています」。
元気で賑やかな過疎を目指す天城町では、今後の活動のなかにも、期待される取り組みがあるようです。富山さんが明かしてくれました。
「北部地区では、2021年に世界自然遺産に登録されたことをきっかけに、関連する活動に力を入れています。世界自然遺産を巡る『天城岳松原登山道登山』といった計画も進めています」。
(写真)サトウキビ畑の農道を抜けるとある、隆起サンゴ礁が浸食されてできた犬の門蓋
インタビューの終盤は、天城町の魅力についてのお話しになりました。
「徳之島に来るのはお金がかかります。LCC(ローコストキャリア)がある奄美大島と違い、徳之島は鹿児島市内からでも飛行機で(普通運賃なら)往復6万円ぐらいかかります。それもあってか、世界遺産の島にしてはまだまだ観光客は少ないと感じています。行政としては人口流出を防ぐためにも、観光地の整備や移住者を積極的に誘致するなど、取り組むべきことは数多くあると認識しています。ただ、観光客の方に徳之島の魅力を尋ねると、人が多くないから大自然や壮大な景観を自分だけのものとして堪能できる、そこが魅力だとおっしゃいます」と語るのは中水さん。今後は、国内の世界自然遺産地域を参考に、まちの魅力を発信する取り組みを行っていくといいます。
最後に、まちの魅力が伝わるエピソードを、和田さんが教えてくれました。
「天城町の公式YouTubeチャンネルに、『ねお、町長になる』※というドラマがあります。そこには森田町長自ら出演し、少々過激な演出にも体当たりで演じるなど、天城町の魅力が詰まったPRドラマとなっています。とても寛容でユーモアのある町が天城町なのです」。
インタビューの終盤は、天城町の魅力についてのお話しになりました。
「徳之島に来るのはお金がかかります。LCC(ローコストキャリア)がある奄美大島と違い、徳之島は鹿児島市内からでも飛行機で(普通運賃なら)往復6万円ぐらいかかります。それもあってか、世界遺産の島にしてはまだまだ観光客は少ないと感じています。行政としては人口流出を防ぐためにも、観光地の整備や移住者を積極的に誘致するなど、取り組むべきことは数多くあると認識しています。ただ、観光客の方に徳之島の魅力を尋ねると、人が多くないから大自然や壮大な景観を自分だけのものとして堪能できる、そこが魅力だとおっしゃいます」と語るのは中水さん。今後は、国内の世界自然遺産地域を参考に、まちの魅力を発信する取り組みを行っていくといいます。
最後に、まちの魅力が伝わるエピソードを、和田さんが教えてくれました。
「天城町の公式YouTubeチャンネルに、『ねお、町長になる』※というドラマがあります。そこには森田町長自ら出演し、少々過激な演出にも体当たりで演じるなど、天城町の魅力が詰まったPRドラマとなっています。とても寛容でユーモアのある町が天城町なのです」。
※『ねお、町長になる』(2021年10月公開)
コロナ禍の影響でふれあいが減り、安全のために子どもたちへの声がけも減少する現代。その時流に相反するように、人との結びつきを強めたまちづくりを目指す天城町の取り組みは、実のところ、高齢化と人口減少が進むすべてのまちが、今後向かうべき方向を示しているかも知れません。
「寄付をいただくということは、天城町のまちづくりに直接携わっていただくこと」だと捉え、企業版ふるさと納税を活用したいという天城町の取り組みを、ぜひ寄付というカタチで支えてください。
(オフィス・プレチーゾ 桜岡宏太郎)
【鹿児島県・天城町】町民が主役の自立型まちづくり 教育と文化の町プロジェクト
コロナ禍の影響でふれあいが減り、安全のために子どもたちへの声がけも減少する現代。その時流に相反するように、人との結びつきを強めたまちづくりを目指す天城町の取り組みは、実のところ、高齢化と人口減少が進むすべてのまちが、今後向かうべき方向を示しているかも知れません。
「寄付をいただくということは、天城町のまちづくりに直接携わっていただくこと」だと捉え、企業版ふるさと納税を活用したいという天城町の取り組みを、ぜひ寄付というカタチで支えてください。
(オフィス・プレチーゾ 桜岡宏太郎)
【鹿児島県・天城町】町民が主役の自立型まちづくり 教育と文化の町プロジェクト