【町長に聞く】官僚時代の経験を生かして地方創生に取り組む~山形県西川町~
2022-09-26 08:00:00
町長の菅野大志さん

山形県の山間にある西川町。2022年4月、人口5,000人足らずの小さなこの町に、官僚出身の町長が誕生しました。菅野大志さん(=写真)です。官僚から市長になるケースは散見されますが、町村長はきわめて珍しいといいます。官僚時代は地方創生に深く携わり、前職が内閣官房「デジタル田園都市国家構想実現会議事務局」という強みを生かし、町長就任後は国の交付金などを活用しながら、様々な事業を立ち上げています。地方創生をキーワードに故郷に恩返しをしたいという、菅野町長の思いをお聞きしました。

自然と文化が共存する西川町。町の発展のために交流人口・関係人口を増やしたい

出羽三山を望む西川町の風景
西川町は、月山、羽黒山、湯殿山からなる「出羽三山」の麓に広がる自然豊かな町です。町内を寒河江川が流れ、イワナやヤマメ、アユなどの釣りが楽しめます。また、全国有数の豪雪地帯として知られ、月山では全国でも珍しい「夏スキー」を楽しむことができます。

また、この地は出羽三山の山岳信仰の場として、古くから多くの修験者や参拝者を迎えてきました。彼らをもてなすためにふるまったキノコや山菜が食文化として根付いているなど、山岳信仰を中心とした文化が残されています。「まちの魅力は豊かな自然だけでなく、文化が感じられるところ。自然のなかに身を置きながら、歴史や文化を体感していただける町です」と菅野町長は町の魅力をこう話します。
巡礼する日人々の様子
ところが、町の人口減少には歯止めがかからず、この課題を解決するためには働き口を確保することが重要だといいます。「そのためには、交流人口や関係人口を増やすことが必要。町の豊かな観光資源を生かして、観光を盛り上げていきたい」と菅野町長は話します。

外部の力を積極的に活用する。企画提案で官民連携の事業化へ

「就任してすぐに感じたのは、外部の力をうまく活用できていないところ」と話す菅野町長。「小さな町でもあり、財政は潤沢とはいえません。政策を進めるためには、外部の力を活用することが不可欠です。事業費の半分を国からの交付金で賄い、残りを企業版ふるさと納税などの寄付金などを充てることができれば、町の財源に負担をかけることなく事業を進めることができます」。

菅野町長は、まち・ひと・しごと創生本部や、デジタル田園都市国家構想実現会議の事務局にいたこともあり、交付金を取るのは得意といいます。「事業化の条件は、交付金を取れる事業であること。そして町の課題解決に合致しており、企業にとってもベネフィットがあること。企業と対話を重ねることで企業の方針や要望を把握し、先回りして企業の求めるものを企画提案しています」と菅野町長。企業とうまくマッチングでき、財源の裏付けが取れれば事業化は早いといいます。
自然豊かな西川町の風景

自治体の事業としては初となるゲームアプリによる観光振興。大きな事業への第一歩の予感

いま西川町では、AI技術を活用した周遊観光型謎解きゲームのアプリ制作を核とした、地域活性化プロジェクトを進めています。これは、謎解きゲームのアプリをダウンロードして、ゲームの進行に合わせて町内に仕掛けられた謎を解くというもの。ゲームを楽しみながら観光地や商店を巡ることで、参加者には町の魅力に直接ふれてもらうことができます。


こうしたAIを使った周遊型観光アプリの取り組みは自治体としては初めての試み。「人口5,000人の小さな町でも、魅力を効果的に発信できるプロジェクトとして大きな期待を寄せています」と菅野町長。このプロジェクトは2022年度中にモデルツアーができ、2023年度にリリースされる予定といいます。「交流人口拡大という課題解決にもなるうえ、全国のほかの自治体への横展開も期待できます。大きなプロジェクトになる可能性を秘めているので、企業の皆様にはぜひ関わっていただきたいです」。
水が噴き出るダムの様子

ファーストペンギンの自治体になりたい。官僚の経験を生かして官民連携を推し進める

このプロジェクトだけに限らず、新しく関係を築いた企業とは積極的に次の事業のための対話を重ねたいと菅野町長は話します。「我々の強みは、これまで民間同士でやってきたことを、西川町を挟むことで官民の事業にできること。そこに国からの交付金を充てることができれば国が認めた事業ということになり、地方創生を応援する企業としてPRしていただくことも可能です。最初の事業展開のお手伝いをさせていただくことで、企業の成長をサポートしていきたい」。

また菅野町長には、西川町を「ファーストペンギン」の自治体にしたいという思いがあります。「これまでどこにも受け入れられなかった(企業発案の)プロジェクトであっても、西川町なら拾い上げられるかもしれません。地方創生の中枢にいた首長という強みを生かし、事業化に向けて様々な提案をできると思っています」。さらに、寄付を活用した事業で問題になることが多い経済的利益供与についても「問題にならない範囲を把握しているので、安心して任せてください」といいます。

これからの地方創生にとって、企業の力の活用は不可欠と話す菅野町長。「官民の連携を推し進めることで町の課題を解決していきたい。西川町で何か新しいことに挑戦したい企業の皆様、ぜひお声がけください」。
(日下智幸)

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