全国のこども食堂に泉佐野産(いずみさのもん)の地場産品を届けたい~大阪府泉佐野市~
2022-08-26 08:00:00
キャベツ畑で地上産品を抱える男性

泉佐野市産を中心に地場産品などを購入し、全国のこども食堂に食材としてお届けするプロジェクトです。こども食堂を利用する子どもたちを支援すると同時に、地場産品・特産品のPRや販路拡大により生産者への支援にもつなげたいとするこの取り組みは、大阪府泉佐野市の社会貢献への思いから生まれたといいます。事業立ち上げの経緯や、事業にかける思いなどを、市の担当者にお聞きしました。

恒常的な社会貢献はできないものか。子ども達の貧困問題の存在を知ったことが事業立ち上げのきっかけに

大阪府泉佐野市ふるさと創生課の石田隆也さん
今回、話をお聞きしたのは、大阪府泉佐野市ふるさと創生課の石田隆也さん(=写真)です。

泉佐野市は、以前から災害支援などに積極的に取り組んできた経緯があり、恒常的な社会貢献のための仕組みづくりを模索していたといいます。
2022年1月、石田さんは、子ども達の貧困問題と、それを少しでも解消していくための「こども食堂」の存在を知りました。「市として力になれることはないだろうか」、企業版ふるさと納税の責任者であった石田さんは、企業版ふるさと納税の仕組みを活用して何か貢献できることはないか模索をはじめました。
箱に詰まった野菜の様子
企業版ふるさと納税で寄付募集を行う事業は、内閣府より認定された市の地域再生計画と連動していなければならず、該当しそうな事業を探すところから始めました。ところが「こども食堂」の支援と直接結びつけられそうな事業は見つからず、いったんは断念しかけたものの、「泉佐野産(もん)普及促進事業」と結びつけることで、全国のこども食堂と市内などの生産者の双方を同時に支援することができるという着想にいたったといいます。

スピード感をもって事業化を推進。新しいチャレンジに前向きな市の風土も後押し

市の沿岸部にある「りんくうタウン
(写真)市の沿岸部にある「りんくうタウン」

企業版ふるさと納税を活用する寄付募集事業は、たとえ寄付が集まらなくても必ず実施する必要があります。「最初に庁内でのコンセンサスを得て、予算措置をするところから始めました」と話す石田さん。2月に部内で部・課長にプレゼンし、部内の賛同を得たうえで3月に市長にプレゼン。無事賛同を得ることができたといいます。そして4月の補正予算を確保する臨時議会で提案、承認され、事業実現に向けて動き出すことになりました。

「ほかの市町村では、2月、3月に庁内で新規提案された事業案が4月には承認され実現することはかなり難しいのではと思います」と石田さんは振り返ります。「しかも私自身、当市の職員としては1年目のいわば新参者。その私の提案を受け、予算1,000万円の新規事業がこのスピード感で承認されたことに、正直自分でも驚いています。新たなチャレンジを受け入れる風土がある泉佐野市の懐の深さに、改めて頭が下がる思いをするとともに、後には引けない責任感を感じています」。

多くの人に子どもの貧困問題を知ってほしい。支援の輪を拡大することで社会課題の解決に貢献

泉佐野産等の普及を通じた子どもの未来応援プロジェクトの説明図
今回の事業は、市からの事業受託事業者が、泉佐野市や特産品相互協定取扱自治体の生産者などから食材を購入し、全国のこども食堂に届けるというもの。寄付金は、食材の購入費や梱包費、配送代、その他事業広報費など、その全額が事業経費に充てられます。「この事業は、地場産品のPRや生産者支援にはつながりますが、本市の税収がいっさい増えることがない純粋な社会貢献活動といえます。これは民間企業では考えられないことであり、過去24年間、民間企業で営業担当者として、自社に利益を残すことを目的に活動を行ってきた身としては、全く異なる切り口の取り組みにチャレンジできることに、新鮮さとやりがいを感じています」と石田さん。

この事業のもうひとつのポイントは、本社所在地も含め、企業が支援したい地域への支援が可能であること。「寄付入金先は本市ですが、(50万円以上の寄付をいただいた場合)支援先のこども食堂の立地は自由に選んでいただけます。そのため、企業版ふるさと納税では寄付の対象にできなった本社所在地への支援が可能となります」。本社所在地以外の自治体に寄付を行う場合「なぜその自治体なのか」といった企業内での選定理由付けが難しいという課題がありましたが、この事業ではその課題も解決されているといえます。
盛り重なった野菜
また、この事業は泉佐野市ならではの取り組みという訳ではなく、全国のどの自治体でも実施することが可能です。「企業版ふるさと納税の寄付の有無にかかわらず実施することが前提条件の為、事前に予算を取って事業化する必要がありますが、仕組みそのものはシンプルで難しいことではありません。この取り組みを積極的に展開することで、ほかの自治体も巻き込み、支援の輪を拡大していきたい」と石田さんは話します。

一方、社会貢献とはいえ、寄付が集まらなければ完全に市の持ち出しの事業となってしまう可能性も。「企業側のメリットもしっかりとお伝えしながら、寄付募集活動を続けていきたいです。1年限りで終わらせるのではなく、次年度以降も継続できるよう、誠心誠意取り組んでまいります。そして、この制度自体の利用率向上や普及促進に挑戦していきたいと考えています」と、石田さんは抱負を語ってくれました。
(日下智幸)

【大阪府・泉佐野市】こどもの未来応援プロジェクト