長い歴史と豊かな自然に育まれた「里山里海」文化の魅力~石川県輪島市。多様な魅力を次代につなぐまちづくり~
2022-06-24 08:00:00
輪島市は、石川県の能登半島北西部にある都市です。中世に曹洞宗の大本山「總持寺(そうじじ)」が開かれ、日本海を北前船(きたまえぶね)が往来した時代には海上交通の要衝として栄えました。市の中心部で開かれる「朝市」の歴史は平安時代にまで遡るといわれ、輪島市が古くから多くの人や物、情報の集まる拠点だったことをいまに伝えています。江戸中期以降は漆器業も盛んになり、「輪島塗」の名で全国に広くその名を知られるようになりました。
輪島市一帯で育まれてきた文化を象徴する言葉として、「里山里海」があります。山と海に囲まれた限られた平地に暮らす人々は、斜面を拓いた棚田などでの農業と、海での漁業による生活を営んできました。厳しくもありながら豊穣をもたらす自然環境と共生するための知恵や習わしが、伝統文化としていまも受け継がれています。
世界が認める里山里海を守り継ぐ
里山里海の魅力は、世界が認める普遍的価値でもあります。「能登の里山里海」は2011年、世界農業遺産に認定されました。世界農業遺産は、国連食糧農業機関(FAO)が多様な農業のあり方を評価し、重要な農法や生物多様性などを有する地域を認定する制度で、認定は世界で9番目、新潟県佐渡市の「トキと共生する佐渡の里山」とともに、国内では初となるものです。
その象徴的な場所が、輪島市を代表する景勝地の一つ、「白米千枚田(しろよねせんまいだ)」です。日本海に面した斜面に1,004枚もの小さな田んぼが連なる景観は、唯一無二の絶景です。長く輪島に住む地元の方も、「棚田は全国にたくさんありますが、白米千枚田は海とのコントラストが特に美しいですよ」と、その魅力を語ります。
しかし、農業機械が入りにくい棚田での稲作は維持が難しいため、かつては多くが休耕田となり、荒れていた時期もありました。
耕作放棄地が目立っていた白米千枚田ですが、昭和57年(1982)、県外から訪れた修学旅行生が草刈りを手伝ったことをきっかけに、地元でも「地域の資源である千枚田」を次代に引き継いでいこうという機運が高まりました。近年では田んぼの一部で、地域内外の人々による「オーナー制度」が導入され、棚田での稲作が守られています。現在、白米千枚田は、「輪島朝市」、「曹洞宗大本山總持寺祖院」と並ぶ観光スポットになりましたが、そのことによって、地域では「もっときれいにしていこう」という機運も高まっています。
その象徴的な場所が、輪島市を代表する景勝地の一つ、「白米千枚田(しろよねせんまいだ)」です。日本海に面した斜面に1,004枚もの小さな田んぼが連なる景観は、唯一無二の絶景です。長く輪島に住む地元の方も、「棚田は全国にたくさんありますが、白米千枚田は海とのコントラストが特に美しいですよ」と、その魅力を語ります。
しかし、農業機械が入りにくい棚田での稲作は維持が難しいため、かつては多くが休耕田となり、荒れていた時期もありました。
耕作放棄地が目立っていた白米千枚田ですが、昭和57年(1982)、県外から訪れた修学旅行生が草刈りを手伝ったことをきっかけに、地元でも「地域の資源である千枚田」を次代に引き継いでいこうという機運が高まりました。近年では田んぼの一部で、地域内外の人々による「オーナー制度」が導入され、棚田での稲作が守られています。現在、白米千枚田は、「輪島朝市」、「曹洞宗大本山總持寺祖院」と並ぶ観光スポットになりましたが、そのことによって、地域では「もっときれいにしていこう」という機運も高まっています。
多様な地域資源を生かして取り組む地域振興
「能登の里山里海」の世界農業遺産認定に続き、2015年には北陸新幹線が金沢駅まで開業したことにより、東京金沢間が約2時間30分でつながり、首都圏とのアクセスが飛躍的に向上しました。
そうした流れのなかで、輪島市は、朝市、祭礼、伝統文化、漆工芸、自然、食、海洋レクリエーションなど、豊富に存在する地域固有の資源を組み合わせることで、多様化する観光ニーズに合わせ、体験型・交流型の要素を盛り込んだ観光振興に力を入れています。
また、地域のブランド価値向上にも注力しています。輪島市は「輪島塗のまち」として全国に知られています。漆に関する有形無形の地域資源の価値や文化を世界に向けて発信することで、人の交流から多様なまちづくりへの展開が期待されています。
そうした流れのなかで、輪島市は、朝市、祭礼、伝統文化、漆工芸、自然、食、海洋レクリエーションなど、豊富に存在する地域固有の資源を組み合わせることで、多様化する観光ニーズに合わせ、体験型・交流型の要素を盛り込んだ観光振興に力を入れています。
また、地域のブランド価値向上にも注力しています。輪島市は「輪島塗のまち」として全国に知られています。漆に関する有形無形の地域資源の価値や文化を世界に向けて発信することで、人の交流から多様なまちづくりへの展開が期待されています。
人々が守ってきた資源を次代へつないでいくために
里山里海の自然・文化は高く評価され、次世代に引き継ぐべき素晴らしい財産として認められました。多様な地域資源を活かした観光振興、地域ブランド価値の向上に向けた取り組みも進められています。しかし、課題もあります。このうちの一つが、白米千枚田でも大きな課題となってきた、地域の担い手不足です。
輪島市を含む奥能登地域は、全国的にも少子高齢化、人口減少が特に進んでいる地域の一つです。1960年代には5万人を上回っていた市の人口は、半世紀あまりで半分ほどに減少しました。急激な人口減少は地域を支えてきた伝統産業にも影響が大きく、市を代表するブランドである輪島塗も、将来を担う職人の不足が心配されています。市では販路拡大やオンラインでの発信を支援するなど、輪島塗を次代につなぐ取り組みを活発に行い、新たな担い手の確保にも力を入れています。
輪島市の豊富な地域資源の数々は、「里山里海」をはじめとして、古くからの営みと密接に結びついてきたものばかりです。地域の人々が脈々と受け継いできただけでなく、近年では地域の外の人も加わり、地域を愛するたくさんの人々の努力によって守られています。人口減少という大きな課題に向き合いながらも、それぞれの地域資源のもつ価値を見つめ直し、磨きをかけることで、かけがえのない魅力を次代に引き継いでいこうとしています。
輪島市を含む奥能登地域は、全国的にも少子高齢化、人口減少が特に進んでいる地域の一つです。1960年代には5万人を上回っていた市の人口は、半世紀あまりで半分ほどに減少しました。急激な人口減少は地域を支えてきた伝統産業にも影響が大きく、市を代表するブランドである輪島塗も、将来を担う職人の不足が心配されています。市では販路拡大やオンラインでの発信を支援するなど、輪島塗を次代につなぐ取り組みを活発に行い、新たな担い手の確保にも力を入れています。
輪島市の豊富な地域資源の数々は、「里山里海」をはじめとして、古くからの営みと密接に結びついてきたものばかりです。地域の人々が脈々と受け継いできただけでなく、近年では地域の外の人も加わり、地域を愛するたくさんの人々の努力によって守られています。人口減少という大きな課題に向き合いながらも、それぞれの地域資源のもつ価値を見つめ直し、磨きをかけることで、かけがえのない魅力を次代に引き継いでいこうとしています。