ラグビーの聖地・花園ラグビー場が舞台。ラグビーで人をよび、まちの活性化を狙う~大阪府東大阪市~
2022-06-20 08:00:00
ラグビーのゴール

2019年秋。日本中を熱狂の渦に巻き込んだラグビーワールドカップ2019™日本大会(以下RWC2019)の、全国12会場のひとつとなったのが、東大阪市花園ラグビー場(以下、花園ラグビー場)です。

花園ラグビー場は、秩父宮親王のお言葉がきっかけとなり、昭和4年(1929)に開場した日本初のラグビー専用スタジアムで、東京・秩父宮ラグビー場と並び称される、日本ラグビーの聖地です。

なかでも、101回の歴史をもつ全国高校ラグビー大会の会場(第42回大会以降)としての知名度は抜群で、“花園”といえば同大会のことを指すほどに、大会とスタジアムは同一視される存在となっています。

現在、花園ラグビー場の所有者である東大阪市では、この日本ラグビーの聖地を中心に据えた、まちの活性化を目指すプロジェクトを進めています。このプロジェクトを推進する市の思いを、企業版ふるさと納税の担当者に伺いました。

聖地・花園を中核に据えたラグビープロジェクト

東大阪市都市魅力産業スポーツ部花園・スポーツビジネス戦略課総括主幹の阿南裕樹さん(=写真右)と主査の田渕弘晃さん(=写真左)、企画財政部企画室企画課の高岡章佐さん(=写真中央)
お話を伺ったのは、東大阪市都市魅力産業スポーツ部花園・スポーツビジネス戦略課総括主幹の阿南裕樹さん(=写真右)と主査の田渕弘晃さん(=写真左)、企画財政部企画室企画課の高岡章佐さん(=写真中央)です。まずは、「ラグビーの”聖地”花園ラグビー場を活用したまちづくりプロジェクト」ができた経緯から伺いました。

「プロジェクトは、ふるさとコネクトに登録する時期に合わせた2021年に選定しました。ふるさとコネクトを利用すれば、きっと多くの人に知ってもらえると考え、東大阪市らしいプロジェクトを選びました」と高岡さん。プロジェクトは、花園ラグビー場を中心に据えて展開されるといいます。

「市民の方々が、ラグビーを始めとするスポーツをプレイする施設としてはもちろん、高校ラグビーの選手が目指す憧れの舞台として、プロのラグビー選手が活躍する迫力のゲームを観戦するスタジアムとして、また、各種のスポーツ教室や見学で訪れるなど、ラグビーを中心に様々な目的で人々が来訪する目的地として花園ラグビー場という存在をフル活用していくのが、東大阪市の計画です」と阿南さんが続けます。

高校生ラガーの夢を広げる花園チャレンジマッチ

上から見たスタジアムの様子
ところで、ラグビー関係人口の現状はどのようになっているのでしょうか。

「全国高校ラグビー大会は(総来場者数)10万人を超える来場者を集めることもありましたが、現在は僅かながら減少傾向にあります。花園ラグビー場ではほかにも中学生のラグビー大会や大阪府ラグビーカーニバルなど、いろいろな大会が行われています。あらゆる大会の参加関係者や観客を増やすためには、ラグビーの普及と競技人口拡大が重要だと考え、ラグビーの普及活動に力を入れています」と田渕さんは話します。

ラグビー人口を増やすことが、結果的にラグビーを求めて来訪する関係人口を増やし、常に賑わうまちづくりにもつながる。東大阪市が描く関係人口拡大の道筋は、シンプルですが、地道な努力の積み重ねが求められそうです。

「2021年からは、“高校生ラガーの技術向上と関西圏の高校ラグビー部の交流”を目的にした、『花園チャレンジマッチ』を、東大阪市ラグビーフットボール協会の協力の下、開催しています。多くの高校生ラガーは、花園を夢見ながらも、それが実現できないまま高校を卒業します。そのままラグビーをプレイしなくなることも少なくありません。そこで、少しでも多くの(高校生)ラガーに、花園でプレイする機会を与えることができればという発想で立ち上げたのが、花園チャレンジマッチです」。

この大会に出場するチームには、頑張って勝ち上がることによって、ご褒美として夢の瞬間が待っていると阿南さんは言います。「大会は2日制で行われますが、1日目を勝ち残ったチームは2日目は花園ラグビー場第1グラウンドでプレイできるシステムになっているのです」。全国高校ラグビー大会の決勝戦やRWC2019の舞台となった“花園第1グラウンド”のピッチに立つことができる選手たちは、その幸運とともに、夢のような時間と、足を震わせ立った芝の感触を、生涯忘れることはないでしょう。

まだまだある、子どもから高齢者までを対象とした普及策

ライトアップされたスタジアムの外観
花園チャレンジマッチのほかにも、注目を集めるイベントがあるといいます。「コロナ禍でずっと延期になっていますが、40歳以上の高校ラグビー部のOBが、(原則として)当時のチームメイトとともに聖地・花園のピッチでラグビーをプレイする、マスターズ花園という交流大会も計画しています」と田渕さん。第1回大会は、2022年10月8~10日に開催予定であることが発表されており、準備が進んでいるそうです。

このマスターズ花園は現役世代への支援を掲げて行われますが、東大阪市はラグビーの裾野を広げる施策も展開していると話す阿南さん。「現在、タグラグビーの普及にも力を入れています。昨年度は市内全小学校において、体育の授業でタグラグビーを採り入れており、5~6年生を対象にした交流大会も開催しています」。

東大阪市をホームタウンとする、国内ラグビー最高峰のリーグワンに所属する花園近鉄ライナーズも、普及にひと役買っています。小学3年生から中学生までを対象に行うライナーズアカデミーがそれです。放課後、聖地・花園を舞台に、ラグビーを基礎から学ぶことができるラグビー教室は、すでに大好評です。

ラグビーによるまちづくりの現状と仮題

スタジオ前に並ぶ屋台の様子
次々にラグビーの競技人口拡大策を打ち出す東大阪市は、現状におけるプロジェクトの手応えと今後の課題をどう認識しているのでしょうか。

「いろいろな取り組みは、最終的にはラグビーによる関係人口、交流人口、その先にある定住人口を増やすことを目的としています。その結果が出るのは、もう少し先になると考えています。また、ラグビーによるまちの賑わいづくりという視点で見た場合、ラグビーの関係人口をどう観光に連携させるかや、市内での消費活動など経済への貢献につなげるかは、これから力を入れなければならない課題です」と、田渕さんは現状の課題を指摘します。

この課題の解決に向けては、特に期待することがあるという阿南さん。「ラグビー経験者やラグビーファンには、ぜひ花園ラグビー場に足を運んでいただきたいと思います。そのためにも花園に足を運ぶきっかけを、ひとつでも多く提供していきたいと考えています。例えば、花園チャレンジマッチは2日間の開催ですので、宿泊を含めまちの経済への貢献にも期待しています」。

最寄り駅である近鉄奈良線の東花園駅から花園ラグビー場へ至る通り、愛称「スクラムロード花園」の沿道には、ラグビー用品を扱う店など数々の店舗が並び、ゲームの開催日は大いに賑わいます。この賑わいを市内の各所に広げることが、東大阪市が進めるラグビーによるまちづくりであり経済への貢献なのでしょう。

ラグビーを愛する皆様へ

花園ラグビーミュージアムの館内の様子
(写真)リニューアルし、体験型ミュージアムに変貌を遂げた花園ラグビーミュージアム

インタビューの最後は、寄付を検討されている企業の皆様へ、阿南さんからメッセージを伝えてもらいました。

「ラグビーという文字が目に留まり、この記事を読まれている方もいらっしゃると思います。あくまで担当者としての感想ですが、ラグビー経験者やラグビーを愛する方は、ラグビーに貢献したい、ラグビーを支えたいとお考えの人が多いと感じています。当市が取り組む、『ラグビーの“聖地”花園ラグビー場を活用したまちづくりプロジェクト』は、日本のラグビーを支え、ラグビーの普及に貢献できる、数少ないプロジェクトのひとつです。ラグビーに熱い思いをおもちの皆様、ぜひ、ラグビーのまち東大阪市のプロジェクトをご支援ください」。

RWC2019において花園ラグビー場での予選プール4試合の開催を実現させた大きな要因は、東大阪市と市民、花園ラグビー場に関係する人々の熱意でした。花園を目指す高校生ラガーにも負けない、ラグビーに懸ける熱い思いを抱く東大阪市の取り組みは、きっと全国のラグビーによって人生が変わった皆さんの、心を熱くすることでしょう。
(オフィス・プレチーゾ 桜岡宏太郎)

【大阪府・東大阪市】ラグビーの”聖地”花園ラグビー場を活用したまちづくりプロジェクト