人々の暮らしに寄り添う動物園を目指して。三重県多気町、老朽化が進む小さな動物園の挑戦
2022-05-20 08:00:00
三重県でいちばん大きなため池のほとりに、小さな動物園があります。「ごかつら池 ふるさと村 ふるさと村どうぶつパーク(花と動物ふれあい広場)」。開園当初はゾウやライオンなどを見に訪れる多くの人々で賑わいましたが、開園から約30年、社会情勢の変化などでかつての賑わいはすっかり失われ、老朽化が進んでいます。そしていま、ようやく改修工事の目処がたち、2023年度の着工に向けて着々と準備が進んでいるところです。積年の課題だった動物園改修の実現を後押ししたのは、ここで生まれ育った地域の人々の声と、現場で動物たちと向き合う飼育員の皆さんの思いでした。
進む老朽化と遠のく客足。地域からの励ましの声が改修を後押し
ふるさと村 どうぶつパークのコンセプトは、「身近に動物にふれあうことができる動物園」。園内ではヤギとヒツジを中心に49種約250の動物を飼育しており、動物とのふれあいスペースなどもあるアットホームな動物園です。
開園当初は多くの人で賑わいましたが、いまでは老朽化が目に付くようになりました。空いている獣舎も目立ち、寂れた動物園という印象をもたれることも多いといいます。施設の改修は町の課題のひとつでしたが、人口1万5,000人足らずの町にとって多額な改修費用は負担が大きく、実現しないまま先延ばしになっていました。
そうしたなか、改修への大きな一歩になったのは地域の人たちの声だったといいます。「小さいころにここで遊んだ世代が、いま子育て世代として町を支えてくれています。自分の子どもにも動物とふれあう機会をつくってあげたいという彼らの声が、動物園再生の後押しをしてくれたのは間違いありません」と、プロジェクトを推進する多気町農林商工課の青木さんは話します。
開園当初は多くの人で賑わいましたが、いまでは老朽化が目に付くようになりました。空いている獣舎も目立ち、寂れた動物園という印象をもたれることも多いといいます。施設の改修は町の課題のひとつでしたが、人口1万5,000人足らずの町にとって多額な改修費用は負担が大きく、実現しないまま先延ばしになっていました。
そうしたなか、改修への大きな一歩になったのは地域の人たちの声だったといいます。「小さいころにここで遊んだ世代が、いま子育て世代として町を支えてくれています。自分の子どもにも動物とふれあう機会をつくってあげたいという彼らの声が、動物園再生の後押しをしてくれたのは間違いありません」と、プロジェクトを推進する多気町農林商工課の青木さんは話します。
歯がゆい思いで動物と向き合う。目指すのは地域の役に立つ動物園
こうした町の人たちの声に応えるように、ついに改修工事を行うことが決定しました。「改修工事が決定したことで、多くの人から喜びの声をいただきました。誰よりも喜んだのは飼育員の皆さんだと思います」と青木さん。実際、現場で直接動物や来園者と接する飼育員の皆さんは、毎日のように老朽化する施設に対するお客さんからの声を聞いて過ごしていたといいます。「施設の老朽化や動物が少ないという意見をいただくと本当に胸が苦しくて。動物たちにも我慢を強いているのも辛いです」と、長年動物たちと向き合ってきた飼育員の須﨑さんは振り返ります。
着工は2023年度を予定しており、いまは改修の内容を詰めているところといいます。「動物園が目指すのは、単なるレジャー施設というよりも、地域に寄り添うような施設です。外から多くのお客さんをよぶことは運営という意味では大切ですが、それよりも町の人たちにとって必要不可欠な施設になれるかどうか。町民が大切に思ってくれる施設にしたいです」と青木さん。
着工は2023年度を予定しており、いまは改修の内容を詰めているところといいます。「動物園が目指すのは、単なるレジャー施設というよりも、地域に寄り添うような施設です。外から多くのお客さんをよぶことは運営という意味では大切ですが、それよりも町の人たちにとって必要不可欠な施設になれるかどうか。町民が大切に思ってくれる施設にしたいです」と青木さん。
ずっと愛され続けるために。人と動物の関わりを改めて考えてもらいたい
目標のひとつは、人と動物の関わりを改めて考えてもらえる場所にすることと青木さんは話します。「いま、動物園の役割や地域との関わり方などについて模索しているところです。例えば、子どもたちの自由研究のお手伝いをしたり、動物を飼えない保育園や小学校に出向いたり、動物たちがそれぞれ地域の役に立つような役割をもたせることができるといいですね」と青木さん。
今回の改修にあたっては、ハードとソフト、それぞれについて検討が進められているといい、現場をよく知る飼育員の声は、貴重な意見として捉えられています。ハード面では「雨の日に濡れずに見学できる工夫を」「設備機能を上げて作業しやすい環境に」「いまより広いバックヤードをもつ快適な獣舎を」など、訪れるお客さんや動物たちの飼育環境の改善を求める声が多く聞かれます。一方、ソフト面では「写真や絵のコンテストなど季節のイベントを定期的に開きたい」「動物の生態を知ってもらうワークショップや、バックヤードツアーをやってみたい」など、動物とお客さんの距離を縮めるようなアイデアが出ています。
今回の改修にあたっては、ハードとソフト、それぞれについて検討が進められているといい、現場をよく知る飼育員の声は、貴重な意見として捉えられています。ハード面では「雨の日に濡れずに見学できる工夫を」「設備機能を上げて作業しやすい環境に」「いまより広いバックヤードをもつ快適な獣舎を」など、訪れるお客さんや動物たちの飼育環境の改善を求める声が多く聞かれます。一方、ソフト面では「写真や絵のコンテストなど季節のイベントを定期的に開きたい」「動物の生態を知ってもらうワークショップや、バックヤードツアーをやってみたい」など、動物とお客さんの距離を縮めるようなアイデアが出ています。
また、「子ども向けの職業体験をやってみたい」という声も。地元の子どもたちに飼育員という仕事に親しみをもってもらうことで、次世代の動物園を支えるファンを育てたいという思いが込められています。飼育員の皆さんに話をお聞きして感じるのは、動物園や動物たちへの愛があふれているということ。いつも笑顔で動物やお客さんと接している飼育員の皆さんの思いが形になれば、きっと多くの人に愛される動物園になるはずです。
改修に向けたラストスパート。積年の思いを胸に、未来につながる動物園をつくりたい
最終的にどのような動物園を目指すべきなのか。「そこに明確な答えはありません」と青木さんは言い切ります。「動物と人間との共生。多様性、持続性。これらをキーワードに、地域の住民目線の動物園にしていきたい。この動物園はふれあいをテーマにしていますが、動物と直接ふれあうことが必ずしも推奨される時代ではなくなってきています。人間と動物の関わり方は時代とともに変化してきましたし、今後も変化し続けるはずです」。
「地域の人々の憩いの場所でもあり、動物との共生を学ぶ場所でもある。そんな動物園にするために、飼育員をはじめ、動物園に関わる様々な人たちとアイデアを出し合っています。動物たちにとってはもちろん、訪れる人にとっても快適な場所。時代に合わせていろいろなことができる場所。そんな素敵な動物園にしていきたいです」と、青木さんは話してくれました。
(日下智幸)
【三重県・多気町】未来につなげる動物園再生プロジェクト
「地域の人々の憩いの場所でもあり、動物との共生を学ぶ場所でもある。そんな動物園にするために、飼育員をはじめ、動物園に関わる様々な人たちとアイデアを出し合っています。動物たちにとってはもちろん、訪れる人にとっても快適な場所。時代に合わせていろいろなことができる場所。そんな素敵な動物園にしていきたいです」と、青木さんは話してくれました。
(日下智幸)
【三重県・多気町】未来につなげる動物園再生プロジェクト