“人づくり”が鍵~熊本県湯前町の「笑顔あふれるスポーツ施設整備・健康づくり支援プロジェクト」が目指すもの~
2022-04-18 08:00:00
2020年7月3日から続く記録的な大雨によって、各地に人的・物的被害をもたらした令和2年7月豪雨。熊本県湯前町では人的被害こそなかったものの、建物の床上・床下浸水をはじめ道路、河川、農業、山林、電話、光回線など、多岐にわたる被害を受けました。
この災害からの復旧・復興を目指す湯前町では現在、被災したスポーツ関連施設の再整備と、スポーツによる町民の健康づくりを組み合わせた「笑顔あふれるスポーツ施設整備・健康づくり支援プロジェクト」に取り組んでいます。そこで、プロジェクトの詳細について、地域活性化起業人(※)の大森健宏さん(所属:株式会社ルネサンス)と、湯前町総務課総務係長の工藤陽平さんにお話を伺いました。
※地域活性化起業人制度:地方公共団体が、三大都市圏に所在する民間企業などの社員を一定期間受け入れ、ノウハウや知見を活かしながら地域独自の魅力や価値の向上などにつながる業務に従事してもらい、地域活性化を図る取り組みを特別交付税措置により支援する制度。
この災害からの復旧・復興を目指す湯前町では現在、被災したスポーツ関連施設の再整備と、スポーツによる町民の健康づくりを組み合わせた「笑顔あふれるスポーツ施設整備・健康づくり支援プロジェクト」に取り組んでいます。そこで、プロジェクトの詳細について、地域活性化起業人(※)の大森健宏さん(所属:株式会社ルネサンス)と、湯前町総務課総務係長の工藤陽平さんにお話を伺いました。
※地域活性化起業人制度:地方公共団体が、三大都市圏に所在する民間企業などの社員を一定期間受け入れ、ノウハウや知見を活かしながら地域独自の魅力や価値の向上などにつながる業務に従事してもらい、地域活性化を図る取り組みを特別交付税措置により支援する制度。
民間と協働で進める、健康なまちづくり
まずはプロジェクトの経緯を、工藤さん(=写真)に教えてもらいました。
「湯前町は少子高齢化が進み、2022年3月時点の高齢化率は45%を超えます。住民の健康への取り組みが求められる状況といえますが、1週間に30分以上運動している人は29%程度と、県や国の目標値の半分程度に止まることがわかっています。まちが活力を失わないためにも、高齢の方はもちろん青壮年の方々も、スポーツや健康づくりに取り組む必要があると考えています」。
「一方、グラウンドや体育館などのスポーツ関連施設は、老朽化が進んでいます。子どもたちのカヌー体験やスタンドアップパドルボード(SUP)などアクティビティの拠点だった蓑谷ため池艇庫は、令和2年7月豪雨によって被災して、まだ復旧の目処は立っていません」。
被災からの復旧・復興途上のなかで、全国でフィットネスクラブなどを展開する株式会社ルネサンス(以下ルネサンス)から、住民の健康づくりについての連携提案がありました。これを受け2021年6月、地域活性化起業人制度を活用したルネサンスとの協定を締結。現在、健康のまちづくりに向け協働しています。
「グラウンドやテニスコートの再整備(といったハード面)、指導者の育成、スポーツリーダー的な人材の配置など町民に対するソフトメニューの充実などを含めた、ソフト・ハード両面における複合的な取り組みをはじめ、健康づくりという大きな枠の提案をさせていただいています」という協力企業としての考えを、ルネサンスに籍を置きながら地域活性化起業人として活動する大森さんが説明してくれました。
「湯前町は少子高齢化が進み、2022年3月時点の高齢化率は45%を超えます。住民の健康への取り組みが求められる状況といえますが、1週間に30分以上運動している人は29%程度と、県や国の目標値の半分程度に止まることがわかっています。まちが活力を失わないためにも、高齢の方はもちろん青壮年の方々も、スポーツや健康づくりに取り組む必要があると考えています」。
「一方、グラウンドや体育館などのスポーツ関連施設は、老朽化が進んでいます。子どもたちのカヌー体験やスタンドアップパドルボード(SUP)などアクティビティの拠点だった蓑谷ため池艇庫は、令和2年7月豪雨によって被災して、まだ復旧の目処は立っていません」。
被災からの復旧・復興途上のなかで、全国でフィットネスクラブなどを展開する株式会社ルネサンス(以下ルネサンス)から、住民の健康づくりについての連携提案がありました。これを受け2021年6月、地域活性化起業人制度を活用したルネサンスとの協定を締結。現在、健康のまちづくりに向け協働しています。
「グラウンドやテニスコートの再整備(といったハード面)、指導者の育成、スポーツリーダー的な人材の配置など町民に対するソフトメニューの充実などを含めた、ソフト・ハード両面における複合的な取り組みをはじめ、健康づくりという大きな枠の提案をさせていただいています」という協力企業としての考えを、ルネサンスに籍を置きながら地域活性化起業人として活動する大森さんが説明してくれました。
具体的な計画と、見えてきた課題
(写真)株式会社ルネサンスとの協定締結時の様子。左は長谷和人湯前町長、中央は大森健宏さん、右は株式会社ルネサンス取締役常務執行役員・ヘルスケア事業本部長の望月美佐緒さん
次に、プロジェクトの具体的な計画について大森さんに尋ねました。
「湯前町には民間のスポーツジムはなく、体育館に併設してランニングマシンとエアロバイクを設置し、ダンベルのスペースを設けたトレーニングルームがあります。ヨガや体幹トレーニング用の場所をつくる計画もあります。ただ、トレーニングルームは無償で利用できても指導員がいないという課題があります」。
次に、プロジェクトの具体的な計画について大森さんに尋ねました。
「湯前町には民間のスポーツジムはなく、体育館に併設してランニングマシンとエアロバイクを設置し、ダンベルのスペースを設けたトレーニングルームがあります。ヨガや体幹トレーニング用の場所をつくる計画もあります。ただ、トレーニングルームは無償で利用できても指導員がいないという課題があります」。
「大森さんのおかげで高齢者向けや親子向けの運動教室、お腹のシェイプアップなどターゲットを絞った教室が開催できました。コロナ禍で思うような活動はできておりませんが、放課後の児童向け教室も開催しています」と工藤さんは協定の効果を明かしてくれたあと、課題についても話してくれました。
「いま、子どもたちの運動環境は部活動から社会体育に移行しています。湯前町では総合型地域スポーツクラブを受け皿に、放課後に学校の体育館やグラウンドで子どもたちがスポーツを楽しめるようになっています。ただスポーツ団体では、地域の方が指導や見守りを行う必要があり、指導者の高齢化や、競技性の高い専門種目を教える指導者の減少など、指導員不足が問題となっています」。
「いま、子どもたちの運動環境は部活動から社会体育に移行しています。湯前町では総合型地域スポーツクラブを受け皿に、放課後に学校の体育館やグラウンドで子どもたちがスポーツを楽しめるようになっています。ただスポーツ団体では、地域の方が指導や見守りを行う必要があり、指導者の高齢化や、競技性の高い専門種目を教える指導者の減少など、指導員不足が問題となっています」。
オンライン研修も駆使して、指導員育成を目指す
指導員不足という課題について、工藤さんがさらに詳しく教えてくれました。
「町内には全部で26の(公民)分館があり、すべての分館ではありませんが高齢者向けの運動教室が行われています。以前は、30分程のDVDを観ながら一緒に運動してもらう方法でしたが、同じことの繰り返しになり参加者のやる気も落ちていました。いまは大森さんに運動指導を行っていただくことで、参加者のモチベーションアップにもつながっています」。
「ただ、ひとりで分館すべての指導はできないので、やはり大森さんのように具体的なノウハウや知識を学ばれた方を少しでも増やしていくことが、継続的な活動にもつながっていくと思っております。そのためには、まずスポーツ経験のある希望者に、ルネサンスさんのノウハウを学び、指導員の資格を取得していただく仕組みを2022年度から始める予定です」。
さらに大森さんは続けます。
「湯前町から一番近いルネサンスのクラブまでは移動に2時間半はかかるためクラブでの実習は難しい。そこで、私が行う研修に加えて、スポーツ推進委員さんや介護予防事業に携わる方を対象にした、ノウハウなどを学習できるオンライン研修を計画しております」。
ひとづくりのほかにも、前述の艇庫やそのほかの老朽化した施設など、必要なハード面の整備も進めなくてはならない状況にあります。
「補助などの財源が確保できず町単独での施設整備は厳しい状況です」(工藤さん)。
「町内には全部で26の(公民)分館があり、すべての分館ではありませんが高齢者向けの運動教室が行われています。以前は、30分程のDVDを観ながら一緒に運動してもらう方法でしたが、同じことの繰り返しになり参加者のやる気も落ちていました。いまは大森さんに運動指導を行っていただくことで、参加者のモチベーションアップにもつながっています」。
「ただ、ひとりで分館すべての指導はできないので、やはり大森さんのように具体的なノウハウや知識を学ばれた方を少しでも増やしていくことが、継続的な活動にもつながっていくと思っております。そのためには、まずスポーツ経験のある希望者に、ルネサンスさんのノウハウを学び、指導員の資格を取得していただく仕組みを2022年度から始める予定です」。
さらに大森さんは続けます。
「湯前町から一番近いルネサンスのクラブまでは移動に2時間半はかかるためクラブでの実習は難しい。そこで、私が行う研修に加えて、スポーツ推進委員さんや介護予防事業に携わる方を対象にした、ノウハウなどを学習できるオンライン研修を計画しております」。
ひとづくりのほかにも、前述の艇庫やそのほかの老朽化した施設など、必要なハード面の整備も進めなくてはならない状況にあります。
「補助などの財源が確保できず町単独での施設整備は厳しい状況です」(工藤さん)。
スポーツで健康なまちをつくり、スポーツで人をよびたい
ルネサンスというプロフェッショナルのサポートを受け、取り組みの鍵となる人づくりを進める湯前町は、今後の目標をどこに定めているのでしょうか。
「まずスポーツ実施率の向上です。週に30分程度運動をされる方が30%に満たない現状を、県の目標である50%程度まで上げていきたいと考えています」。
「ふたつめの目標は、コミュニティスペースの利用者数を年間9,000名弱まで増やしたいということです。湯前町のスポーツ団体加入率は、2020年が10%程度、2022年が15%程度ですが、これを17%程度まで回復させ、将来的には20%くらいまで増やして、家族にひとりはスポーツとつながっている状態をつくりたいと考えています」。
「まずスポーツ実施率の向上です。週に30分程度運動をされる方が30%に満たない現状を、県の目標である50%程度まで上げていきたいと考えています」。
「ふたつめの目標は、コミュニティスペースの利用者数を年間9,000名弱まで増やしたいということです。湯前町のスポーツ団体加入率は、2020年が10%程度、2022年が15%程度ですが、これを17%程度まで回復させ、将来的には20%くらいまで増やして、家族にひとりはスポーツとつながっている状態をつくりたいと考えています」。
「また、SUPなど若い方の関心度が高い、SNS映えする爽やかで楽しいスポーツも、まちで楽しめるスポーツとして採り入れたいと考えています」。新しいスポーツの団体立ち上げという点では、取り組みたい種目や方向性についての住民の意見を、的確に行政に届けるためのコーディネーター養成も、今後は計画していく予定だといいます。
「今はライフラインなど災害からの復旧が優先となり、さらにコロナ禍も影響して地域スポーツコミュニティの衰退も顕著になっています」。
被災地ならではの事情もあって、いま寄付を募っていることのようです。
最後は、寄付を検討中の企業に向けた、町からのメッセージを伺いました。
「寄付をいただいた企業の皆様には、健康づくりを兼ねて湯前町にお越しいただき、森に囲まれた蓑谷ため池でSUPなど水上スポーツを体験しながらこころ休まる時間を過ごしていただける、連携プランも検討しております。あらゆる連携も念頭において、ご支援を検討していただければと思っております」。
将来のまちのためにスポーツによる町民の健康づくりに取り組む湯前町。ルネサンスとの協定からもその本気度がわかります。ただ、被災からの復旧・復興との同時進行の困難さは、想像に難くありません。スポーツや健康づくりはもちろん、災害復旧・復興に関心をおもちの企業の皆様も、ぜひ寄付をご検討ください。
(オフィス・プレチーゾ 桜岡宏太郎)
【熊本県・湯前町】笑顔あふれるスポーツ施設整備・健康づくり支援プロジェクト
「今はライフラインなど災害からの復旧が優先となり、さらにコロナ禍も影響して地域スポーツコミュニティの衰退も顕著になっています」。
被災地ならではの事情もあって、いま寄付を募っていることのようです。
最後は、寄付を検討中の企業に向けた、町からのメッセージを伺いました。
「寄付をいただいた企業の皆様には、健康づくりを兼ねて湯前町にお越しいただき、森に囲まれた蓑谷ため池でSUPなど水上スポーツを体験しながらこころ休まる時間を過ごしていただける、連携プランも検討しております。あらゆる連携も念頭において、ご支援を検討していただければと思っております」。
将来のまちのためにスポーツによる町民の健康づくりに取り組む湯前町。ルネサンスとの協定からもその本気度がわかります。ただ、被災からの復旧・復興との同時進行の困難さは、想像に難くありません。スポーツや健康づくりはもちろん、災害復旧・復興に関心をおもちの企業の皆様も、ぜひ寄付をご検討ください。
(オフィス・プレチーゾ 桜岡宏太郎)
【熊本県・湯前町】笑顔あふれるスポーツ施設整備・健康づくり支援プロジェクト