熊本県 南阿蘇村のプロジェクト概要

南阿蘇村は九州の中央部、世界最大規模の阿蘇カルデラの南山麓に位置しています。阿蘇カルデラは九州の水瓶ともいわれ、6つの1級河川の源流となっています。また平成の名水百選に選定された南阿蘇村湧水群もあり、「水の生まれる郷」として知られています。 近年の環境省の研究において、阿蘇の草原は「水源涵養力(かんようりょく)」が森林よりも優れていること、また地中に炭素を蓄積し続けていることが分かりました。 しかし、近年のライフスタイルの変化、畜産農家の減少、後継者不足などにより、飼育する牛馬の頭数が減少し、草原の維持管理が危ぶまれています。 阿蘇の草原を守っていくことは、豊富な地下水を守ること、さらには草原がもつ二酸化炭素吸収能力、生物多様性、防災・減災など多面的機能の維持にもつながります。また、雄大な草原景観は観光資源としても重要です。 そこで、草原景観と地下水を守っていくために「南阿蘇村地下水保全基金」を設置し、農畜産業・環境・観光面から各種プロジェクトに取り組んでいます。 いずれの取り組みにも、多額の費用がかかります。全国の企業の皆様のご協力とご寄付を得ることができれば幸いです。

なぜ寄付を募るのか

美しい草原を維持するためには、「野焼き」が欠かせません。長いものでは1メートルを超えるほど伸びる茅(かや)などの枯れ草を、春に一斉に焼き払い、芽吹きを促すというもので、1000年近く前から行われているともいわれています。 また野焼きの際、隣接するほかの牧場や森林エリアに火が延焼しないようにするために放火帯をつくる「輪地切り(わちぎり)」も、草原の維持管理に欠かせません。 このように阿蘇の草原は、1000年以上前から採草・放牧など人々の営みのなかで維持・活用されていました。しかし、畜産人口の減少に伴い、草原利用に対するニーズが減り、また、少子・高齢化、過疎化が進行しており担い手が不足しています。 「野焼き」や「輪地切り」など人の手が加わることによって保たれてきた阿蘇の草原を、持続的に維持し利用することが困難になっています。 そこで、野焼きなどの草原維持作業の省力化、くまもとあか牛を中心とした畜産業の活性化、また草原維持の水源涵養をはじめとした新たな意義の創出に取り組む必要があると考えます。阿蘇の草原を守ることで、阿蘇の豊富な地下水と阿蘇の景観の保全につなげます。

プロジェクトのポイント

草原の維持・再生は、以下の通り取り組んでいます。 ① 野焼き作業責任者を「集落」から「村」へ、災害保険にも村で加入 集落の長が担ってきた野焼き作業責任者を村が担当することで、野焼きの維持、草原保全につなげたい考えです。また村で災害保険にも加入したいと考えています。 ② 輪地切り用大型草刈機の導入&野焼きプロチームを養成 大型草刈機を導入し輪地切りの省力化を図ります。また「野焼きプロ人材」を認定・登録し、報酬を払って派遣する予定です。 ③ 牧柵をバーチャルフェンス化するなど、放牧の省力化を推進 有刺鉄線の牧柵を設置していましたが、IoTを活用しバーチャルのフェンスを張り巡らし、放牧の省力化を目指します。 ④放牧によりゲップ(メタンガス)の抑制、エシカルあか牛のブランド化 飼料の改良を行い、くまもとあか牛のゲップを削減を目指します。また、肉質の改善を行い、エシカル和牛としてのブランディングを進めます。 ⑤草原の優れた機能を周知広報し、草原ファンを増やす 当村で、「阿蘇ビート2023」が初開催します。このイベントで当村を知ってもらい、草原ファンを増やすきっかけにつながればと思っています。

困りごと・課題

草原は放牧や採草など、人々の営みによって維持されてきましたが、農作業の機械化やライフスタイルの変化で草原の面積は100年前の半分以下に減少し、いまもなお減り続けています。 草原が減少することで、村の多くの水源地で湧水量が減少しています。これは危機的状況といえます。 阿蘇エリアでは、広大な草原を活用した放牧が行われてきましたが、農業の機械化や化学肥料の普及、茅葺き屋根の減少など、農業形態やライフスタイルの変化に伴い、集落の大半を占めた耕作農家が農耕用牛馬を必要としなくなりました。現在、草原における飼料生産場としての利用は、畜産業を営む者に限られています。また、高齢化、後継者不足、放牧頭数の減少により、草原の放牧利用も減っています。 手入れをされない草原が増加すると、低木が侵入するなど遷移が進行し、再び草原として利用することが困難となります。また、管理の行き届かない草原や植林地が増加すると斜面の崩落が起こりやすくなり、阿蘇に源を発する水資源が減少し、独特の景観を損なうことにつながります。

メッセージ

当村は雄大な阿蘇山を中央に有する阿蘇カルデラ内の南部に位置しています。阿蘇山は世界でも有数といわれる大型カルデラと外輪山を有し、その麓には、水田と草原が広がっています。また、地獄温泉、火の山温泉などの温泉や多くの湧水群など地域資源にも恵まれています。 阿蘇の景観は文化的景観ともよばれ、古くから高度な循環型社会が形成されてきました。草原景観とともに、草原を中心とした循環システムこそが世界に誇る阿蘇の最大の特徴であり魅力といえます。折しも、近年の環境省の研究により、阿蘇の草原は地下水を育む能力が森林よりも優れており、阿蘇で生まれた水は熊本都市圏以外の広範囲にも恩恵をもたらしているほか、「二酸化炭素固定」「植物多様性」「防災・減災」など、多面的機能に優れていることが示され、草原のもつ公益性が明らかとなりました。 また2022年5月、当村は「SDGs未来都市」に選定されました。本事業をはじめ、持続可能な社会の構築に向け様々な活動を行っております。 多くの方から愛され親しまれる南阿蘇村を築いて参りますので、企業の皆様からの温かいご支援ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

目標金額:150,000,000
SDGs目標
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