北上市は岩手県南西部、北上盆地の中央部に位置し、古くから交通の要衝として栄えてきました。北上川と和賀川が合流する肥沃な大地に田園が広がり、西に奥羽、東に北上山系の山々が連なる、美しく豊かな自然に恵まれています。 本プロジェクトは、当市を代表する観光地「北上展勝地」の桜並木を後世に残そうという取組みです。北上展勝地は、秋田県の角館、青森県の弘前公園と並ぶ「みちのく三大桜名所」の一つで、「日本さくら名所100選」にも選定されている桜の名所です。開花シーズンには「北上展勝地さくらまつり」が開催され、40万人以上の花見客でにぎわいます。 北上展勝地は、2021(令和3)年に開園100周年を迎えました。しかし、北上川沿いに約2km続く桜並木は、樹木の老齢化とともに、手入れ不足による樹勢衰退が進んでいます。将来にわたり、この桜並木を継承していくためには、早急に延命・樹勢回復措置に取り組む必要があります。 当市では、これからも多くの人に北上展勝地の桜を楽しんでいただくため、そして北上展勝地のさらなる発展に向けて、桜の延命化対策事業を進めたいと考えています。
2020(令和2)年に行った樹勢調査の結果、 1.桜並木全体における不良木は合計262本。前回調査時から約5%増加しており、樹勢維持が十分にできておらず衰退傾向にあること 2.今後、適切な対策を実施しなければ、衰退がさらに進行する可能性があることがわかりました。 老齢化による樹勢衰退が進んでいる桜並木を、将来にわたって保全・継承していくためには、剪定や薬剤散布といった従来の維持管理活動に加え、土の入れ替えや肥料散布等による本格的な土壌改良、枯損木の処理、不定根誘導といった延命・樹勢回復措置を早急に行う必要があります。
市民が「桜守(さくらもり)」となって桜並木の育成管理に携わり、「みんなで北上展勝地の桜を守り育てていく」という意識を醸成します。 当市では、桜の維持管理を行いながら成長を見守る「桜守」の育成に取り組んでいます。これには、市民とともに桜並木を次の100年につなげていきたいという思いがあります。 2020年11月には、弘前公園(青森県弘前市)の桜を管理する樹木医で、当市の桜管理アドバイザーでもある小林勝氏を講師に招き、講習会を開催しました。市民に桜の若木への肥料の与え方を伝え、実際の作業も体験しました。 さらに2021年5月には、地元の小中学生を対象に「桜守」の活動や肥料の与え方をわかりやすく紹介する講習会も開催しました。参加した児童や生徒からは「来年咲く桜にわくわくしている。僕が大人になっても、ずっと咲き続けてほしい」「桜の木は100年も生きていて、本当にすごいと思う。100年後へ、みんなで景観を守っていきたい」といった声がありました。 今後も、市民が主体となって展勝地の桜を守り育てる体制と意識づくりに取り組んでまいります。
展勝地の桜は毎年春になると見事に開花しますが、幹を見ると空洞化していたり、細菌が付着してキノコが生えていたりする木も多く、延命処置が急がれます。 処置が必要とされる木は480本と多いですが、12~3月の積雪シーズンには延命・樹勢回復措置を施せません。そこで年間80本を目安に、6年かけて処置する長期プロジェクトを検討しています。
北上展勝地は、北上市の前身である黒沢尻町で町長を務めた沢藤幸治氏が桜の植栽事業を行い、1921(大正10)年に開園した歴史ある公園です。 桜のシーズンが終わっても、5月はツツジ、初夏はアジサイ、秋は紅葉、冬は白鳥など、四季折々の姿を楽しむことができます。当市では、年間を通して多くの方に来園いただき、にぎわいの場であり続けることを願っています。 北上市民にとって展勝地の桜は、幼少の頃は両親と、やがて親友や恋人と、そして自ら築いた家族と訪れ、春の思い出を重ねていく貴重な存在です。そんなかけがえのない桜並木を後世に残したいという願いが強くあります。 これからも多くの人に桜を楽しんでいただくため、そして北上展勝地のさらなる発展を目指す当市の取組みを、ご支援くださいますよう、よろしくお願いします。