神埼市出身の伊東玄朴(いとう・げんぼく)は、幕末に活躍した医者・蘭学者です。長崎にあった私塾兼診療所「鳴滝塾」でシーボルトに学び、当時流行していた天然痘の予防接種である種痘の普及に尽力しました。また、東京大学医学部の元となった「お玉ヶが池種痘所」を創設するなど、近代医学の発展に多大な貢献をしました。 さらに西洋医学の医師として初めて将軍の侍医になるなど、名実ともに我が国において西洋医学の頂点を極めた人物の一人と言えるでしょう。 本プロジェクトでは、西洋医学の先駆者である伊東玄朴の功績を後世に末永く伝え、郷土の偉人を通じて将来を担う人材を育成する施設として「伊東玄朴記念館」を整備します。 記念館には、修学旅行生などを100名規模で受入れられる多目的室を設置する予定です。また展示室では、伊東玄朴の功績を史料や映像などを活用してわかりやすく紹介することで、郷土の偉人を全国の人々に広く知っていただくとともに、神埼市の認知度アップにもつなげます。 <プロジェクトのポイント> 伊東玄朴は神埼市神埼町仁比山(にいやま)で生まれました。町内には、21歳まで過ごした旧宅が今も残されています。江戸時代に建てられた茅葺きの家屋は「伊東玄朴旧宅」として公開されていますが、わずかな展示があるだけで、彼の偉大な功績や貴重な史料を展示する施設としては十分とは言えません。そのため、伊東玄朴は同時代に活躍したほかの偉人たちに比べて、知名度が低いと感じています。そこで彼の知名度を上げ、すばらしい功績を正しく伝える施設が必要と考えています。 本市には、年間80万の来訪者がある「吉野ヶ里遺跡」や、春と秋のわずか12日間だけ一般公開され、バスツアーにも組み込まれる国の名勝「九年庵(くねんあん)」といった名所があります。しかし、国内外から多くの来訪者があるにもかかわらず、ほかに観光施設がないことから、滞在時間が短い点が課題となっています。 記念館の完成により、既存施設と組み合わせた観光プランの提案が可能になることから、来訪者の増加も期待されます。 <メッセージ> 伊東玄朴は、猛威を振るった天然痘の撲滅に尽力した人物です。彼の取組みは、新型コロナウィルスとの闘いのさ中にいる現代と似ているように思います。そんな伊東玄朴が活躍した時代を改めて振り返ると、彼の偉大さを感じずにはいられません。 ところが残念なことに、伊東玄朴を描いた小説や漫画では、松本良順に敵対する人物として登場することが多く、史実と異なる物語によって、本来あるべき伊東玄朴のイメージが大きく損なわれています。 また、江戸時代に活躍した蘭学医として圧倒的な知名度を誇る杉田玄白と混同している人も多く、伊東玄朴出生地に暮らす者としては、誤った認識や知名度不足に歯がゆい思いをしています。 今回のプロジェクトで記念館が完成すれば、郷土が生んだ偉人の功績を正しく後世に伝えられると期待しています。ご協力いただいた企業の皆様においては、記念館や市のホームページでご紹介させていただくことで、多くの世代に御社を知っていただき、イメージアップを図れると考えています。ご支援のほど、よろしくお願いいたします。