【認定ファンドレイザー®が語る】企業版ふるさと納税の寄付金を活用した事業分野の傾向
2022-03-15 08:00:00
パソコンでデータを見ている様子とロゴマーク

令和2年度税制改正後、企業版ふるさと納税を活用し寄付をした2020年度の実績件数は前年度比約1.7倍の2,249件(1,640企業)、金額は約3.3倍の約110億1,000万円となりました。

事業所や工場などがある自治体だけではなく、企業自身のビジョンやミッション、業務と関連する事業に対して寄付する企業も増えてきています。

様々な自治体の事業に対し、企業が寄付をしている分野の傾向をお伝えします。寄付をする事業を選ぶ際に参考にしていただけると幸いです。

【1】大規模災害後の復興支援

街の被災している様子
地震や雪害、洪水、火山の噴火など様々な自然災害に見舞われる日本。各自治体は「地域防災計画」をつくり、災害発生時のシミュレーションをしています。しかし、実際に災害が起きると復旧・復興には多大なるリソース(人、物、金)が必要となります。

災害発生直後に流れるニュースを見て「企業として何かしたいけれど、どこから手をつけてよいのかわからない」と気を揉まれることがあるかもしれません。ボランティアや物資の提供も災害発生直後は現場でのニーズがわからず、また現地の受け入れ・受け取りの態勢が整わないときに人を派遣したり、物資を送ったりするのはミスマッチングが起きる可能性があります。そんななか、行えることは「寄付」をすることです。

過去にも、災害発生直後や、土砂の撤去、災害復旧公費、被災者の生活再建など向けた事業が立ち上がり、企業版ふるさと納税を通じて寄付の呼びかけがされました。また、寄付を通じて自治体と関係性を構築すると、その自治体の状況についてよく理解できるため、復興に向けた現地ニーズに合った様々な事業を自治体に提案できるかもしれません。

例えば、災害遺構の施設運営事業の場合、施設の運営管理や観光に向けた施策などの提案を行うことができるでしょう。災害に強いまちづくりについては、ICT(情報通信技術)の活用や、次世代型自動車などのプロダクトの開発など多岐にわたった事業展開を協働で行える可能性があります。

【2】環境保全

手のひらに地球を乗せ地球から木が生えている様子
地球環境の保全は、私たち人類にとって差し迫った課題になっています。各自治体でも、豊かな自然を守り、未来につなげる事業が計画・実施されており、それに対して企業版ふるさと納税を通じた寄付を募っています。

環境保全に関するプロジェクトは多岐にわたります。ゼロカーボンシティ宣言をして2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロを目指し様々な取り組みを行っている自治体があります。清掃工場でのゴミ焼却時に発生する排ガスから二酸化炭素を取り出し、野菜や微細藻類の成育促進に活用する世界初の取り組みなどテクノロジーを活用し課題解決に取り組む自治体もあります。また子どもたちへの環境教育を積極的に提供することを掲げている事業もあります。

環境保全や、ゼロカーボンの取り組みについての技術があり、その技術を自治体にも提供したい企業や、その分野に関心がある企業は、まずは寄付から始めてみましょう。

【3】次世代の子どもたちを育てる

空を指差す2人の子供
子どもはその土地の宝です。まちづくりも、仕事の創生も、まずはいずれ大人になる、その土地で暮らす子どもたちが豊かな生活を送れるかが重要です。たとえ、進学で外に出たとしても、故郷でよい経験をもつ子どもたちはUターンをしたり、知人に呼びかけて観光を促進したりするなど、故郷に何かしらを返してくれるはずです。

自治体では、子どもたちや保護者が集う子育て支援の施設や、公園、図書館などの施設や、通学路を整備の事業について企業版ふるさと納税での支援の呼びかけを行っています。

また建物というハード面の事業だけではなく、奨学金制度や、体験学習の機会の創出など子どもたちに「参加」してもらう取り組みを実施している自治体もあります。

企業の理念や実施している事業が合致している場合、自治体の事業に企業がボランティアや技術者を派遣し、よりよい事業の展開ができるでしょう。

【最後に】

現在日本には1,700以上の自治体が存在します。自治体がどのような事業を展開しているか、自治体のウェブサイトをひとつひとつ見て確認するのは、かなりの時間と労力を要します。

企業版ふるさと納税のサイトをご覧いただければ、各自治体が行っている事業とその内容について効率よく知ることができます。そして、関心をもった事業についてはぜひ「寄付」をすることから始めてみてください。それが、自治体が抱えるニーズや取り組む優先事項を知り、関係性を築く第一歩となります。
(認定ファンドレイザー® 鎌倉幸子)