【寄付集めの成功例に迫る】企業への積極的なアプローチが鍵。危機感をもって全庁で対応~石川県野々市市~
2022-01-28 08:00:00
石川県金沢市に隣接する野々市市では、2017年に図書館と市民学習センターを融合させた新施設「学びの杜ののいち カレード」を開設しました。ここを賑わい創出拠点としながら、様々な角度から若者や女性の創業を後押しする取り組みを行っています。
2017年度に企業版ふるさと納税を活用しはじめてからの4年間で、この事業に対して延べ245社から4165万円もの寄付が集まりました。特に寄付企業数はほかの市町村と比べて突出しており、2021年度も30社以上からの寄付が見込まれています。どうしてこれほどまでの寄付を集めることができたのか、担当者からお話をお聞きしました。
2017年度に企業版ふるさと納税を活用しはじめてからの4年間で、この事業に対して延べ245社から4165万円もの寄付が集まりました。特に寄付企業数はほかの市町村と比べて突出しており、2021年度も30社以上からの寄付が見込まれています。どうしてこれほどまでの寄付を集めることができたのか、担当者からお話をお聞きしました。
やれることは全てやり切る。全庁の惜しみない協力で企業にアプローチ
今回お話をお聞きしたのは、野々市市生涯学習課の山崎さん(=右)と中谷さん(=左)。まずは、プロジェクトの立ち上げ当初から担当だった山崎さんに、当時の取り組みの様子をお聞きしました。
野々市市が企業版ふるさと納税を活用したのは、制度が始まってから2年目でした。新しくオープンしたばかりの「学びの杜ののいち カレード」での創業支援への取り組みに、寄付を充てることにしたといいます。「待っていても絶対に集まらない」と考えた山崎さんは、「生涯学習課だけでは無理だと思ったので、庁内の全課に協力を依頼しました」と振り返ります。
副市長から各部の部長に協力依頼を出してもらい、部長から各課員に通達。依頼方法などを記したマニュアルを山崎さんが作成し、期日を決めて全員で一斉に関係企業に電話してもらったといいます。「市内に事業所がある企業、市と取引がある企業はもちろん、職員の友人知人から親戚まで、あらゆる企業に連絡していただきました」と山崎さん。電話で反応があった先には資料を送り、詳しい説明や依頼は担当課である生涯学習課が行ったといいます。
「実は、事業予算の全額を寄付で集めなければいけないと、勝手に思い込んでいました。まだまだ足りないと思っていましたが、気がついたら独走状態でした」と山崎さんは笑います。「やれることは全部やったという自負はあります」といい、勘違いからの危機意識が多くの寄付につながったと考えているそうです。
野々市市が企業版ふるさと納税を活用したのは、制度が始まってから2年目でした。新しくオープンしたばかりの「学びの杜ののいち カレード」での創業支援への取り組みに、寄付を充てることにしたといいます。「待っていても絶対に集まらない」と考えた山崎さんは、「生涯学習課だけでは無理だと思ったので、庁内の全課に協力を依頼しました」と振り返ります。
副市長から各部の部長に協力依頼を出してもらい、部長から各課員に通達。依頼方法などを記したマニュアルを山崎さんが作成し、期日を決めて全員で一斉に関係企業に電話してもらったといいます。「市内に事業所がある企業、市と取引がある企業はもちろん、職員の友人知人から親戚まで、あらゆる企業に連絡していただきました」と山崎さん。電話で反応があった先には資料を送り、詳しい説明や依頼は担当課である生涯学習課が行ったといいます。
「実は、事業予算の全額を寄付で集めなければいけないと、勝手に思い込んでいました。まだまだ足りないと思っていましたが、気がついたら独走状態でした」と山崎さんは笑います。「やれることは全部やったという自負はあります」といい、勘違いからの危機意識が多くの寄付につながったと考えているそうです。
申込書にひと工夫あり。翌年度以降の寄付予定を事前に確認
その結果、1年目で70社以上から寄付を獲得し、翌年以降も概ね同じ数の企業から寄付が集まっています。「事業は複数年にわたるため、最初から翌年以降のことも視野に入れていました」と山崎さん。寄付の申込書には、翌年度以降の「寄付予定」額を記入する欄を設けていたため、多くの企業が最初から継続して寄付することを意識してくれていたといいます。「そのおかげもあり、初年度から毎年継続して寄付してくださっている企業も多いです。事業を進めるうえで、寄付の見込みが分かるのは本当にありがたいことです」。
寄付企業の多くは、創業を支援して野々市市を元気にしたいという取り組みに賛同してくれた企業だそうですが、「施設の建設に関わった企業や、設備を納入した企業が記念に寄付してくれたケースもあったと後で知りました」と話します。
寄付企業の多くは、創業を支援して野々市市を元気にしたいという取り組みに賛同してくれた企業だそうですが、「施設の建設に関わった企業や、設備を納入した企業が記念に寄付してくれたケースもあったと後で知りました」と話します。
寄付企業の名前は市のホームページに掲載するほか、施設の入口から入ってすぐの場所に掲示しているといいます。「かなり目立つ場所なので、視察に来た方などは必ずご覧になっています。自社の名前をプレートで確認するために遠方から足を運んでくれる方もいらっしゃいました」。
施設の運営には企業の応援が不可欠。みんなで育てる施設であり続けたい
このプロジェクトは現在も継続中で、企業からの寄付金は創業塾やセミナーの開催などの創業支援事業(=写真上)に充てるほか、ビジネス支援に資する図書や野々市市の次世代を担う子どもたちの成長につながるような図書の購入に充てているといいます。「セミナーによって毎年数名が着実に創業しています。また、この図書館での体験や思い出が、進学などで野々市市を離れる若者にとって、将来ふるさとに帰ってくるきっかけとなればうれしいと思っています」と山崎さんは話します。
「寄付をくださった方のなかには本が好きという方もいらっしゃいました」と山崎さん。「寄付のベネフィットとして図書館の新刊案内を送ってはどうかというアイデアもいただきました。まちに関わる人が増えているのはうれしいことです」。
施設の目標来場者数は、年間30万人。昨年はコロナ禍で少し落ち込んだものの、概ね目標は達成しているといいます。「市民の皆さんには充分に活用していただけていると思いますが、行政だけの力では限界があります。企業にもこの施設をどんどん活用していただき、応援もしていただきたいです。施設の活用法はいろいろあると思います。施設をみんなで育てるという意識をもって、取り組みを続けていきたいです」と、締めくくってくれました。
(日下智幸)
【石川県・野々市市】複合施設「学びの杜ののいち カレード」を拠点とした創業支援事業を通じて賑わいを創出
施設の目標来場者数は、年間30万人。昨年はコロナ禍で少し落ち込んだものの、概ね目標は達成しているといいます。「市民の皆さんには充分に活用していただけていると思いますが、行政だけの力では限界があります。企業にもこの施設をどんどん活用していただき、応援もしていただきたいです。施設の活用法はいろいろあると思います。施設をみんなで育てるという意識をもって、取り組みを続けていきたいです」と、締めくくってくれました。
(日下智幸)
【石川県・野々市市】複合施設「学びの杜ののいち カレード」を拠点とした創業支援事業を通じて賑わいを創出