【認定ファンドレイザー®が語る】企業にとっての包括連携協定のメリットと課題点
2022-01-19 08:00:00
7つのパズルピースを抑える7つの手

自治体の多くは、企業版ふるさと納税の寄付を通して自治体の課題解決に一緒に取り組んでくれる企業を強く求めています。また、寄付をきっかけとして、その地域を活性化させる商品開発や、スタッフが地域のイベントにボランティア参加するなどのかかわりが深まることで、その自治体との包括連携協定に結び付く可能性もあります。

少子高齢化や人口減少が進み、税収が減るなか、企業と連携することで企業のもつノウハウや、専門的な視点からのサポート、ネットワークに期待をする自治体が増えています。また企業側は、自治体と連携をすることで社会的信頼性の醸成による企業のイメージアップ効果が期待されます。

ただ企業として、自治体と包括連携協定を交わし事業を行うことで得られるメリットだけではなく考慮すべき課題点もあります。それを把握して包括連携協定の事業を行いましょう。

メリット1 地域の社会課題解決に向けた貢献

白いパズルと1ピースを持つ手
近年、企業に対しCSR(Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任)や社会の共通課題に対して、企業の本業を通じて解決に取り組むCSV(Creating Shared Value、共有価値の創造)の実践が求められています。包括連携協定を交わし事業を行うことはこの実践に直結します。

また、企業にとって本社や支社、工場などがある地域を大切にし、住民が暮らしやすい環境整備に取り組むことは、自分の会社の足元も強くします。例えば、地域がよくなるとそこで暮らす従業員の生活の質の向上も図られます。生活の満足度は仕事のパフォーマンスにも影響するでしょう。地域への貢献は、巡り巡って企業全体にメリットを及ぼします。

メリット2 新たなサービスの開発

アイパッドの上に浮かぶロケット上昇のイラスト
すでに企業がもつノウハウやネットワークを活用して地域課題の解決に取り組むことが自治体から期待されています。

しかし、それにとどまらず自治体と協働で住民アンケートやインタビュー、自治体のもつ統計などの分析を通じ見えてきた地域課題の解決策は住民ニーズに対応する実にあった新たなサービスや商品開発のヒントとなる可能性があります。

メリット3 社会的信頼の醸成

どのような企業でも自治体と包括連携協定を結べるわけではなく、自治体が包括連携事業協定者募集などをかけて呼びかけ、審査などを通った企業が選ばれます。協定を結んだ企業は自治体のウェブサイトやパブリシティ(報道関係資料)に公表されるので、企業のPRとなります。

また、その地域で暮らす方たちとの対話や、地域に根ざして課題解決に向けた事業が可視化されることでその企業に対する認知や評価が高まることもあり得るでしょう。

このように自治体から選ばれ、またその地域で結果を出すことで企業の社会的信頼が醸成されます。

メリット4 自治体の仕事の仕方の把握

自治体の仕事の流れや仕方を直に学ぶことができます。

自治体の計画の策定・運用・評価の仕方、予算編成のタイミングや意思決定のされ方など、企業にいてはあまりふれられない自治体の仕事について知ることができます。自治体の職員が使う「業界用語」も耳にするでしょう。

企業にはスピード感を求められますが、それを押し付けてはうまく物事が進みません。自治体の仕事の仕方を知り、それに最適化した方法を提案することで、信頼が生まれ、より円滑に事業を進めることができるはずです。

自治体の仕事の仕方を知ることで、包括連携協定の期間が終了した後も、ほかの地域を含め様々な自治体と仕事をする場合でもスムーズに事業を展開できるようになります。

課題1 事業の期間が短い

時計とNO TIMEの文字
少子高齢化、地域や経済の活性化、福祉の充実化、環境の保全など、自治体と協働で取り組む分野の課題は大きく、またいろいろな要因が複合的に絡み合い、解決のためには時間がかかるものばかりです。

しかし、包括連携協定の有効期間は1~3年と、短期間で結果を求められるケースが多いのが現状です。3年としているところでも、1年ごとの契約延長という形をとっています。

課題2 収益性の低さ

電卓を打ちながら書類を書く様子
費用については「規定による協力を行うために要した費用については、必要に応じ、協議する」としているところもあれば、「自治体からの費用負担については、無償を原則」と明記している自治体もあります。

必要な経費などはあいまいにせず、しっかりと協議をしないと、持ち出しになってしまい、事業の維持が難しくなります。

課題を解決するために

通常、包括連携協定は自治体が企業やNPOなど民間からの提案を募集し、企業が提案内容を申請する形で進められます。

締結をしてから費用負担などを含め「こんなはずではなかった」という状況を避けるために、応募する前、また締結前に以下の点をチェックしましょう。

<提案前>
・包括連携事業協定者募集要項をきちんと読む
・要項にある内容を企業内で合意したうえで、提案するかを決める

<自治体との包括連携協定締結前>
・期間内で何をどこまでやるのかを自治体と双方で確認する
・かかる予算面などを協議し、合意をしたうえで契約を結ぶ

特に大切なのが提案書を作成する前に、募集要項をきちんと読み、その内容に賛同をしたうえで応募することです。そうすることで事業開始後のいざこざを防ぐことができます。
(認定ファンドレイザー® 鎌倉幸子)