【認定ファンドレイザー®が語る】企業の従業員ボランティアが地域の活性化を促進する理由
2022-01-05 08:00:00
VOLUNTEER文字とたくさんの手

地域が企業の従業員のボランティアを受け入れることで得られるメリットは、人手不足の解消だけではありません。企業の従業員ボランティアが地域の活性化のためにもたらす付加価値についてお伝えするとともに、企業と地域、双方のメリットをまとめました。

百聞は一見に如かず! 地元に入り課題を肌で感じる

「地域の課題」はインターネットで検索すると数多く見つけることができます。関心がある自治体のウェブサイトにある「総合計画」を見ると、自治体が抱える課題や、目指す方向が示されています。

しかし、課題ひとつをとっても自治体により、そこに至る歴史的背景や解決のために使える資源・環境は異なります。そしてネット検索や本を読むだけでは、つかみきれない「感覚」があるのが事実です。

現地に入り地元の人とする何気ない話のなかに課題の本質を突くものがあったり、解決の糸口となるヒントが隠されていたりします。

ネットなどの情報だけで得た知識で、地域課題の解決のための提案をしても実にあわないものかもしれません。観光や視察というまちの表の部分だけを見る訪問ではなく、地域課題にふれるボランティアの活動を通じ、より深くその課題の本質を知ることができます。

見えないコトの発見

木立の中の雪あかり
「ここには何もないからね」地方に行くと、そう話しかけられることもあるのではと思います。そこで暮らす人たちの日常生活のなかでは、目に見えない地域の魅力が、外から来たボランティアにとっては新鮮な体験だったり、知的好奇心を刺激するものだったりします。

企業の従業員であれば、通常業務での知識や経験と紐づけて、新たな商品やサービスのアイデアが浮かび、それを実現させるための企画書の作成やプレゼンテーションの手法などのノウハウを、一緒に活動する地元の人に伝授することもできるでしょう。

地域がもつ資源「お宝」を、外からくるボランティアだからこそ見つけ出せる可能性があります。

外の人だからこそ心を開いてもらえることも

対談中の女性
東日本大震災後、ボランティアをしていた東北の避難所で「家族を亡くして辛いけれど、周りもみんな同じく家族を亡くしているから、ここでは泣けない」と言われたことがありました。

友人や家族にも話せないことでも、「何か手伝いたい」という思いをもちながら外からくる人には、打ち明けることができる人もいます。特に大震災時のボランティアは「がれき撤去をする体力がない」と思いがちですが、そばにいて話を聞くだけでも、話したくても話せない人たちにとっては大きな力になります。

不特定多数のボランティアが活動する被災地で、企業から派遣されたボランティアと聞くと安心されることもありますし、企業名を覚えていてくれる人もいます。

必要なリソースを確保する

まちの課題を解決するためには資源(リソース)が重要です。

そのまちのなかに、リソースが不足している場合、そのリソースを知っているボランティアが必要な人を連れてくることもあります。近年は、企業内のボランティア活動は、従業員自らが企画するケースもあります。ボランティアとして関わった地域の課題を解決するため、自社内でボランティアを呼びかけることも可能でしょう。また企業で製造した製品を寄贈するために、内部調整ができるかもしれません。

大切なポイントは、ボランティアとして現地に入ることで、その地域の課題の本質にふれ、社内で提案をして、地域が本当に必要としているものを投入するなどの活動を行えることです。

企業がよかれと思って寄贈したものや、提供したサービスが、地域の現状に即していないというケースも見られます。ボランティアとして、課題を抱える方たちの声を聞きながら、解決のために何が必要なのかという視点をもちつつ、個人や所属する企業のリソースを確保、提供することで、実にあった支援を行うことが可能となります。

人手不足の解消ではない付加価値の提供

突き合わせた2つの拳
少子高齢化の流れのなかで、課題解決のための人がいないと、頭を抱えているまちが数多くあります。

企業からのボランティアは単なる人手不足の解消につながるだけではなく、「外の人の強み」を活かしたニーズの把握やコミュニケーションの促進、リソースの提供などの付加価値の提供が可能となります。

包括連携協定を締結する企業と自治体が増えてきていますが、締結の前に企業側はボランティアとして地域に入り、活動をして、地元の人の生の声を聞くことで、自治体の総合計画に示されている課題の背景や数字がもつ意味を、しっかりと把握してはいかがでしょうか。
(認定ファンドレイザー® 鎌倉幸子)