【認定ファンドレイザー®が語る】包括連携協定事業を円滑に進めるために企業が気をつけるべきこと
2021-12-09 08:00:00
握手の様子

少子高齢化や人口減少が進むと生活関連サービス業の減少、地域公共交通の撤退・縮小、空き店舗・空き家の増加、そして税収減による行政サービス水準の低下などの課題が顕著に現れます。その解決のため企業の持つノウハウ、専門的な視点からのサポート、ネットワークに期待をする自治体が増えています。

また企業側は、CSR(Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任)や社会の共通課題に対して、企業の本業を通じて解決に取り組むCSV(Creating Shared Value、共有価値の創造)の実践となるだけではなく、自治体と連携をすることで社会的信頼性の醸成による企業のイメージアップ効果が期待されます。

自治体と包括連携協定を交わしたあと、事業を円滑に行うために企業が気をつけるべきポイントをお伝えします。

自治体がすでに策定している計画を確認する

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企業がすでに持っているノウハウを基に提案する前に、自治体がすでに策定している計画を読み込みましょう。そこに書かれている自治体が認識している課題や解決策に紐づけた形での事業の提案をすると自治体の計画と企業の強みをベースとした提案に親和性が生まれます。

自治体が示した解決策に当てはまるものがない場合には、「この課題について、このような事業を展開してはどうか」と伝えることで、「きちんと自治体のことを理解した上で提案してくれている」と認識されるでしょう。

必ずチェックしてもらいたいのが各自治体の地域づくりの最上位に位置づけられる「総合計画」と人口急減・超高齢化という課題に対して、各地域が特徴を生かした取り組みの戦略をまとめた「まち・ひと・しごと創生総合戦略」です。

また事業分野ごとに計画が立てられているので、それを確認してから提案をしましょう。大切なのはまず相手を知ることです。
参考資料一覧

成果目標を定める

ゴールイメージ
自治体は連携する企業へ高い期待を持っています。時に、過度な期待となっているケースもあります。

協定の期間内で、何を達成目標とするのか自治体と企業間で共通認識を持ちましょう。協定期間内で、できることは限られてくるかもしれませんが、それも含めて「どこまで達成させるのか」という成果目標を定め、両者で合意をするようにします。

モデル地域を設定しそこで行う事業のインパクト、対象となる住民の知識、技能、態度の変化などの質的な変化など、限られた期間ではまち全体の数字として表れないかもしれませんが、小さいスケールでも生み出したい成果目標を確認しましょう。

具体的な活動計画まで落とし込む

成果目標を定めたら、その実現のためにいつ、何をやるのかを示す具体的な活動計画を策定しましょう。

協定締結後、企業側、自治体側の両者とも「相手が動いてくれるだろう」と待ちの状態になっていては、物事は前に進みません。

包括連携協定を結ぶのがゴールではなく、そこから生み出される事業により、その企業は自治体だけではなくサービスを受けた住民から評価を受けるものです。自治体側からのアクションを待つのではなく、こちらから協働での活動計画の策定を呼びかけましょう。

担当者を確認する

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事業の規模によっては、多岐にわたる分野へのアプローチが必要となるでしょう。時には、自治体側も関連部署の参加をコーディネーションする必要が出てきます。

企業との窓口となっている部署だけではなく、そのほかにもかかわる部署があることを認識しておきましょう。

例えば「観光開発」の事業の場合、観光課はもちろん、文化施設を活用する場合には教育委員会の生涯学習課の参加も必要となってくるかもしれません。観光を通した経済振興を目的とするなら経済産業振興課も加わることになります。また全国に発信をするためには広報・広聴課の担当者に参加してもらうことになります。

この事業を進めるうえで、自治体のどの部署が関わることになるのかをあらかじめ確認しましょう。そして、どこが意思決定権を持っているのか、そのためにはどのような準備が必要なのかも事前に確認しておくとよいでしょう。

まとめ

包括連携協定を自治体と結ぶことで企業の信頼性の向上、イメージアップ効果につながることが期待されます。自治体のウェブサイトには、包括連携協定を結んだ企業と首長が写真入りで紹介され、企業にとって信頼性向上のためにありがたい告知となります。

しかし忘れてはいけないのが、この協定は「地域が抱えている課題に対して自治体と民間企業が協力し、解決を目指す」ものであるという点です。

繰り返しになりますが包括連携協定を結ぶのがゴールではなく、そこから生み出される事業により、その企業は自治体だけではなくサービスを受けた住民から評価を受けるものです。

そのためには自治体の計画を読み現状を把握する、それに基づいた成果目標の設定や事業計画策定を協働で進めていきましょう。

企業が日常で行っている計画を実行に移すこのプロセスの開示と実行こそが、その地域に根ざし住民に寄り添う自治体の職員の能力向上を促し、「人を育てる」という副次的効果も生み出すでしょう。

(認定ファンドレイザー® 鎌倉幸子)