【認定ファンドレイザー®が語る】地域密着の小規模企業だからこそできる社会貢献
2021-12-01 08:00:00
オープンサイン

地域課題の解決に当たり、小規模企業は地方自治体の次に中心的な役割を担うことが期待されていることをご存知でしょうか。地域がかかる課題、住民からの小規模企業への期待、そして小規模企業が取り組む活動についてお伝えします。

小規模企業とは

小規模企業とはどれくらいの規模の企業を指すのでしょうか。中小企業基本法によると、業種分類ごとに以下の規模の企業が小規模企業と定義されます。
小規模企業定義
※商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律(小規模事業者支援法)、中小企業信用保険法、小規模企業共済法の3法においては政令に基づき、③のサービス業のなかでも「宿泊業・娯楽業」は常時雇用する従業員20人以下を小規模企業としています。
参考)中企業庁「中小企業・小規模企業者の定義」

地域が抱える課題と小規模企業への期待

シャッター街
2019年にみずほ情報総研株式会社(現在はみずほリサーチ&テクノロジーズ)が小規模企業と住民を対象として実施した地域課題に関するアンケートの結果によると、双方とも「商店街や中心市街地等の衰退」が最も深刻な地域課題をしてあげています。

次に小規模企業があげている「働き手の不足」と住民が課題として感じている「働く場所の不足」は、働き手が欲しい企業と働きたい住民との間に情報が行き渡らず、ミスマッチングが起きている可能性があります。

地域で事業を行う小規模企業は地域住民が感じている地域課題を近い立場でとらえていることが分かります。
小規模企業へのアンケート
参考)
<小規模企業へのアンケート>
みずほ情報総研株式会社「地域における小規模事業者の事業活動等に関する調査」
回答数(n)は、n=4,655。「地域課題はない」と回答した者(n=424)は除いている。
<住民へのアンケート>
みずほ情報総研株式会社「普段の生活と地域とのかかわりに関するアンケート」
回答数(n)は、n=3,491。「地域課題はない」と回答した者(n=509)は除いている。

また住民に対する同アンケートで地域課題にあたり中心的な役割を期待されているのは地方自治体に続き「地域内の小規模事業者」が挙げられています。地方自治体と地域内の小規模企業との差はわずか1.1%と、地方自治体と同様に期待を向けられています。

地域課題の解決に当たり、中心的な役割を担うことが期待される者
みずほ情報総研(株)「普段の生活と地域とのかかわりに関するアンケート」
みずほ情報総研(株)「普段の生活と地域とのかかわりに関するアンケート」
回答数(n)は、n=3,491。複数回答のため、合計は必ずしも100%にはならない。

小規模企業が行う地域貢献活動

祭り衣装
小規模企業の地域貢献は、一社で行うのではなく、地元をよく知る企業が協働で実施する場合が多くみられます。同じ志をもつ仲間と一緒に地域振興をしていく

■経済の振興
「商店街や中心市街地等の衰退」など、企業が所属する地域社会の経済振興への支援は急務といえます。小規模企業が行う経済振興の支援としてイベントやキャンペーンの実施などを通じた商店街の活性化への取り組み、地元の農水産物を使用した特産品の開発、販売を通じた地場産業の活性化などが挙げられます。

また青年会議所などと協働で起業支援をするなど、人材育成に貢献をしている企業もあります。

■文化の維持、振興
地域の祭りや伝統行事の開催のために協賛するだけではなく、従業員がボランティアとして運営をサポートし行事を盛り上げる姿は地元密着の企業ならではの光景です。

また、協賛している伝統行事やコンサートなどの文化振興イベントに、地元の子どもたち、障害者、一人暮らしの高齢者、外国人を招待し、人々の「孤立」を解消し社会との接点をつなぐ機会を提供するなど文化事業を通じまちの課題解決に取り組むケースも見られます。

また近年は、そのまちがロケ地となる映画やドキュメンタリー映像のスポンサーになる企業もあります。地方自治体と共に映画を通じた地域振興を行いながら、外に向けた地域の魅力の発信、観光客の誘致にもつながります。

■教育への支援
小学生勉強風景
小規模企業がもつノウハウや場所は地域にとって貴重な資源です。小学生、中学生、高校生を対象とした職場体験や大学生インターンの受け入れは、単に学校の単位の取得への手伝いだけではなく、地場産業への理解促進、地域内での職業選択の増加や、地域への愛着を育む機会となりえます。

また子どもだけではなく大人に向けても、起業家教育、趣味や生きがいづくりのための講座の支援など、地域住民の「知」の向上と実践の場の提供を行うことで、生涯学習を支えることができます。

■保健・医療・福祉への取り組み
地域には、高齢者、障害者、生活困窮者やホームレス、育児をしている保護者など、生活を営む上で困難を抱えている人たちがいます。

保健・医療・福祉の課題に取り組む地方自治体や福祉施設、NPOにニーズを聞き、それに合わせ企業が持つ商品の提供ができます。

また、従業員が施設などでボランティアをすることで、現状をより深く認識し、その課題を解決するための実状にあった新たなサービスの開発につながる可能性もあります。

■治安・安全・防災に関する活動
地域の防犯活動、交通安全活動、消防・防災活動への支援を行っている企業もあります。近年は頻繁に自然災害が起きる日本において、平時より防災担当を置き企業防災に勤める企業が増えています。これらの企業は自社の従業員・設備の被害を最小限にする施策や事業活動の継続・早期復旧のための施策「事業継続計画(BCP)」を平時のうちから整備しています。

また災害が起きたとき、帰宅困難者の一次避難所として敷地や会議室などを開放したり、避難する地域住民を想定して支援物資を備蓄するなどの取り組みも見られます。

まとめ

小規模企業の強みは、地域についての理解の深さだけではなく意思決定のスピードがあります。大きな規模の企業だと意思決定のために必要となるプロセスも、小規模企業ならすぐに決定し、小回りを利かせながら動くことができます。また、地域住民との顔の見える関係もつくりやすいでしょう。ゆえに、地域課題の解決のため地方自治体に次いで小規模企業に期待がかかっているのです。

小規模企業はその強みを生かしながら、地域の活性化・課題解決に取り組んでいただきたいです。
(認定ファンドレイザー® 鎌倉幸子)