【企業版ふるさと納税コンサルタントに聞く】アンケートから読み解く「企業版ふるさと納税」の現状
2022-09-16 08:00:00
2022年6~7月にかけて、株式会社 JTB・株式会社カルティブ共催で、企業版ふるさと納税に関する実態調査を行いました。2021年1月と7月に続く3回目の定点調査となり、351の自治体と1,289の企業から回答を得ることができました。自治体と企業、双方の意識や取り組み方などを知ることで、企業版ふるさと納税の現状を分析し、制度をより一層普及させることを目的としています。このアンケートの結果から読み取れる「現状」について紹介します。
自治体では受け入れ体制の整備が進むなど、制度利用の積極度がアップ
「寄付を積極的に検討するようになった」自治体は51.6%と半数を超えており、その理由として「企業から寄付の申し出があった」「首長から指示があった」という回答が高い伸び率を示しています。このことから、企業からのアプローチが増加していると同時に、首長が制度に対して積極姿勢を示すようになったことが読み取れます。
寄付募集プロジェクトの認知活動としては、「自治体のウェブページ情報を公開した」が91.7%、「チラシ・パンフレットなどの広報資料を作成した」が64.4%と、いずれも前年から10ポイント前後伸びています。これに対して、「個別企業に電話、メール、DMなどで直接アプローチ(接触)した」が31.1%と約10ポイントの減少。積極的に認知活動は行うものの、直接アプローチをやめた自治体が増えていることが浮き彫りになりました。これは、寄付募集の課題として「庁内の中心となる部局はあるが、他の業務の兼ね合いで時間を作れていない」と回答した自治体が37.8%ほどを占めていることから、前回同様、人員不足により思うように時間を確保できていない自治体が多いことがわかります。また、「寄付を募るプロジェクトの選び方がわからない」は24.9%と増えています。
今後の寄付募集に関しては、「今後のプロジェクトチーム組成による寄付募集意向」を「あり」と答えたのが59.7%。前回よりも9ポイント伸びており、取りまとめを行う担当者を配置して庁内を横断的に推進していく予定がある自治体が増えていることがわかります。
今後の寄付募集に関しては、「今後のプロジェクトチーム組成による寄付募集意向」を「あり」と答えたのが59.7%。前回よりも9ポイント伸びており、取りまとめを行う担当者を配置して庁内を横断的に推進していく予定がある自治体が増えていることがわかります。
企業は検討フェーズから実行フェーズに移行。検討を始めた企業は寄付する傾向に
企業へのアンケートでは、企業版ふるさと納税の認知率、寄付検討率の伸びが鈍化しているのに対し、寄付実施率は1.6ポイント増加し5.2%となっています。これは、前年度比1.44倍にあたり、多くの企業が実際に寄付を実施したことを示しています。「寄付検討が積極的になった」と答えた企業は59.6%と12.4ポイントの増加。積極的に検討する理由としては「世の中の注目度が上がってきた」「寄付実績のある企業から事例を聞いた」がそれぞれ前年から10ポイント以上増えており、企業版ふるさと納税そのものの認知度が上がり、企業のなかに制度が浸透しつつあることを示しています。
寄付を検討したことがある企業のうち、「寄付実績がある」または「寄付意向がある」企業は71%を占めており、検討した企業の多くが寄付を実施、または実施するつもりであることがわかります。寄付を実施した(する)理由としては、「自社の拠点やゆかりの地である自治体で寄付を募っていたから」が64.2%と前回から8.2ポイント上昇しており、拠点への寄付の傾向が強まっていることがわかります。一方、前年度トップだった「趣旨に賛同できるプロジェクトがあったから」は11.5ポイント減少の41.1%にとどまっています。
寄付を検討したことがある企業のうち、「寄付実績がある」または「寄付意向がある」企業は71%を占めており、検討した企業の多くが寄付を実施、または実施するつもりであることがわかります。寄付を実施した(する)理由としては、「自社の拠点やゆかりの地である自治体で寄付を募っていたから」が64.2%と前回から8.2ポイント上昇しており、拠点への寄付の傾向が強まっていることがわかります。一方、前年度トップだった「趣旨に賛同できるプロジェクトがあったから」は11.5ポイント減少の41.1%にとどまっています。
また、寄付における重視ポイントは、「地方創生に積極的に取り組む企業としてのイメージアップ効果」がほぼ横ばいの41.5%でトップに。「地方公共団体との良好な関係の維持」が38.6%と5.7ポイントの増加を示しており、自治体との関係強化が寄付の大きな目的になっていることがわかります。逆に減少したのは「社員の社会貢献意識、モチベーションの向上」で、5.3ポイント減少しています。
「寄付をする要素(寄付をする理由となったもの)」では、企業版ふるさと納税サイトや自治体のウェブサイトへの「企業名の掲出」がそれぞれ40%ほどでほぼ横ばい。伸びが目立つのは「自治体が所管する施設などを活用した実証実験の機会が受けられる」が20.3%と3.8ポイント増えています。このことから、官民連携の取り組みに期待する企業が増えていると考えられます。
「寄付をする要素(寄付をする理由となったもの)」では、企業版ふるさと納税サイトや自治体のウェブサイトへの「企業名の掲出」がそれぞれ40%ほどでほぼ横ばい。伸びが目立つのは「自治体が所管する施設などを活用した実証実験の機会が受けられる」が20.3%と3.8ポイント増えています。このことから、官民連携の取り組みに期待する企業が増えていると考えられます。
企業の寄付条件が明確に。条件に合致するプロジェクトとのマッチングが大切
上で、寄付を検討した企業の71%が寄付を実施した(またはする予定である)ことを紹介しましたが、逆にいうと寄付を断念した企業が29%にのぼることを示しています。
断念理由としては「充分な情報やわかりやすい情報が得られなかったから」が42.9%と2.2ポイントの増加、「寄付したいと思うプロジェクトがなかったから」が11.5ポイント減少したとはいえ41.1%と高い割合を示しています。
最近の傾向として、企業では先に寄付募集プロジェクトの条件を細かく決めることが多く、事業分野や自治体の所在地、期待されるベネフィットなど、条件に合致しないものは検討の対象にすらならない場合があります。条件に合うプロジェクトを見つけることは企業の寄付担当者を悩ませているところでもあり、「自治体に期待すること」のトップが「積極的な情報開示」で、じつに52.4%を占めることもその事実を裏付ける結果になっています。
断念理由としては「充分な情報やわかりやすい情報が得られなかったから」が42.9%と2.2ポイントの増加、「寄付したいと思うプロジェクトがなかったから」が11.5ポイント減少したとはいえ41.1%と高い割合を示しています。
最近の傾向として、企業では先に寄付募集プロジェクトの条件を細かく決めることが多く、事業分野や自治体の所在地、期待されるベネフィットなど、条件に合致しないものは検討の対象にすらならない場合があります。条件に合うプロジェクトを見つけることは企業の寄付担当者を悩ませているところでもあり、「自治体に期待すること」のトップが「積極的な情報開示」で、じつに52.4%を占めることもその事実を裏付ける結果になっています。
民間サービスの活用も視野に。自治体、企業ともに活用意向が高まる
上述したように、自治体の寄付募集の課題として「庁内の中心となる部局はあるが、他の業務の兼ね合いで時間を作れていない」「寄付を募るプロジェクトの選び方がわからない」が挙がっていることから、企業版ふるさと納税に携わる人員と制度への知識が不足している傾向にあることがわかります。
こうした傾向から民間サービスに期待する自治体は増加しており、「企業への情報発信支援」78.6%、「企業への対面等による営業代行」62.6%、「企業からの寄付提案情報」58.8%、「企業への提案資料の作成」55.7%、「寄付獲得の戦略検討支援」51.9%と、それぞれが高い割合となっています。
企業では、「ふるさとコネクト」の利用意向が全体で63.1%と7.8ポイントの増加。会社規模の大きい企業ほど利用意向は高く、1万人以上の企業では76%が利用したいと答えています。企業版ふるさと納税を活用した地域課題解決プラットフォーム「river」に関しては、利用意向が全体で10.6ポイント上昇し53.7%に。1万人以上の企業では70.0%と17.6ポイントも増加しています。
それぞれ、利用したい理由のトップ3は、「企業と自治体の双方にメリットがある」「社会や自治体に貢献できる」「節税対策になる」で、利用したくない理由のトップはいずれも「自社へのメリットを感じない」でした。
今回のアンケート結果から見えてきたものは、自治体、企業ともに、積極的に企業版ふるさと納税を活用しようとしているということでした。企業は、より有意義な寄付の実施を望んでおり、自治体にはより積極的な情報開示が求められています。企業と自治体のマッチングの機会が強く求められていると考えられ、ふるさとコネクトやriverといった、民間のプラットフォームの存在意義も高まっているといえます。寄付を検討中の企業や、より多くの寄付獲得を目指す自治体の皆様、これらのサービスの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
(企業版ふるさと納税コンサルタント 小坪拓也/聞き手 日下智幸)
こうした傾向から民間サービスに期待する自治体は増加しており、「企業への情報発信支援」78.6%、「企業への対面等による営業代行」62.6%、「企業からの寄付提案情報」58.8%、「企業への提案資料の作成」55.7%、「寄付獲得の戦略検討支援」51.9%と、それぞれが高い割合となっています。
企業では、「ふるさとコネクト」の利用意向が全体で63.1%と7.8ポイントの増加。会社規模の大きい企業ほど利用意向は高く、1万人以上の企業では76%が利用したいと答えています。企業版ふるさと納税を活用した地域課題解決プラットフォーム「river」に関しては、利用意向が全体で10.6ポイント上昇し53.7%に。1万人以上の企業では70.0%と17.6ポイントも増加しています。
それぞれ、利用したい理由のトップ3は、「企業と自治体の双方にメリットがある」「社会や自治体に貢献できる」「節税対策になる」で、利用したくない理由のトップはいずれも「自社へのメリットを感じない」でした。
今回のアンケート結果から見えてきたものは、自治体、企業ともに、積極的に企業版ふるさと納税を活用しようとしているということでした。企業は、より有意義な寄付の実施を望んでおり、自治体にはより積極的な情報開示が求められています。企業と自治体のマッチングの機会が強く求められていると考えられ、ふるさとコネクトやriverといった、民間のプラットフォームの存在意義も高まっているといえます。寄付を検討中の企業や、より多くの寄付獲得を目指す自治体の皆様、これらのサービスの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
(企業版ふるさと納税コンサルタント 小坪拓也/聞き手 日下智幸)