地域で子育てをサポート! 静岡県富士宮市、ベビーステーション事業」のいま
2022-05-25 08:00:00
ポスターを持って並ぶ人達の様子

富士宮市では、コンビニエンスストアや公共施設などで粉ミルク用のお湯の提供や紙おむつの販売などを行う「ベビーステーション事業」を推進し、「子育て世代にやさしいまちづくり」を進めています。

この事業は、2020年1月に、当時の北村誠吾内閣府特命担当大臣(地方創生)が視察に訪れるなど、市内だけでなく、国からも注目されている事業です。

今回は、この事業がスタートした経緯や背景、企業との新しい取り組みや今後の展望などについて、富士宮市企画戦略課地域政策推進室の山本明子さんと、富士宮市市民交流課女性が輝くまちづくり推進室の古川恵さんに話を伺いました。

地域全体で、子育て支援をできないか。市の目指すべき姿とNPO法人の意向がマッチ

旗を見る親子たちの様子
育児の大変さを抱える母親・父親にとって、身近に必要な物が「あってよかった!」、気持ちに寄り添い手を差し伸べてくれる人に「会えてよかった!」と思えるまちづくりを目指し、生活に身近なコンビニエンスストアや公共施設などで、粉ミルク用のお湯の提供や紙おむつの販売をしている「ベビーステーション事業」。
事業開始から今年度で7年目を迎えました。

「ベビーステーションプロジェクト(事業)の始まりは、2014年12月、公益財団法人 中部圏社会経済研究所が開催した『企業&NPO協働アイデアコンテスト』で、(主に)当市で活動しているNPO法人『母力向上委員会』が発案した『“ママたちの声”から生みだす!コンビニ発の子育て支援事業』が最優秀賞に選ばれ、同団体が市に事業提案してくださったのがきっかけでした。
富士宮市では、かねてから、ほかの自治体と同様、人口減少・少子高齢化といった問題を抱えており、その解決のためにも、地域全体が温かい目で子育て世代を見守り、そして育児支援をできないかという思いがありました。こうした市の意向とNPO法人『母力向上委員会』の提案がマッチし、当事業がスタートしました」と古川さんは言います。

現在、この事業は、NPO法人「母力向上委員会」に受託し、事業の促進・発展を担っています。同団体の呼びかけもあって、現在、市内にあるコンビニのうち、約9割がベビーステーションに登録しています。

スタートから7年目。Win-Win-Winの関係を目指し、寄付企業・コンビニエンスストア・NPO法人・市での話し合いを定期的に開催

母親向けの商品紹介POP
「寄付実績のある企業やコンビニエンスストア運営会社、受託先であるNPO法人『母力向上委員会』、そして市担当者の間で定例会を開き、当プロジェクト(事業)の進捗状況や課題、そしてその解決に向けた話し合いの場を設けています。1つの団体だけでプロジェクト(事業)を進めるのではなく、関係者の方々と手を取り合って、同じ目的に向かって進めていくことが大切という思いがあります」と古川さん。

「寄付企業のひとつであるアサヒ飲料株式会社さんとは、寄付をきっかけにNPO法人『母力向上委員会』とのコラボレーションが生まれ、当市の商店街やショッピングモールで、アサヒ飲料株式会社が販売する子どもも安心して飲むことができるノンカフェイン飲料を試飲・PRするイベントが開催されました。その際、ベビーステーション事業を知ってもらうために、飲料に首掛けのポップを付け配布しました」と山本さん。

これは事業の認知拡大だけでなく、商品のPRにもつながる取り組みといえ、今後もこうした「Win-Win-Win」の関係で進められるイベントや取り組みを開催していきたいとのことです。

また「コンビニエンスストアにとってもメリットがなければという思いから、ベビーステーション事業に登録しているコンビニエンスストアで『レシート集めて抽選会』を開催しました。
ベビーステーションがあるコンビニエンスストアで購入した(一定額以上の)レシートを集めて、コンビニに持参すると、くじ引きができ、富士宮の特産品や育児関連の商品が当選するというイベントで、販売促進だけでなく、(ベビーステーション事業の)認知拡大にもつながりました」と古川さん。

この事業が注目を集め、実を結んでいるのは、市の立場だけでなく、関連する事業者、運営者、寄付企業、すべての立場にメリットがあるよう、話し合いを重ね、アイデアを形にしているからなのです。

「最近では、紙おむつだけでなく、離乳食や子ども用のお菓子を販売したり、当事業をPRするポップをつくって、わかりやすい場所においてくれたり。こうした工夫をしてくださるコンビニエンス(ストアの)オーナーさんもいらっしゃいます。
地域全体で子育てをサポート・支援していきたいという当市の目指すべき姿が、少しずつ、浸透しているのだと感じ、うれしく思います」と山本さんは言います。

育児世代に対しての認知度は高まっているが、課題も。幅広い世代に知ってもらいたい

妊婦体験をする男性
2020年度に実施したベビーステーションの認知度に関するアンケート結果によると、育児世代(30代)が「知っている」の割合は60.5%である一方、20歳代以下は30.4%、70歳以上は15.3%と育児世代以外の認知度は低い状況です。

「妊娠・出産時に市から配布する資料のなかに当事業のチラシを加えていることもあり、育児中の世代には、少しずつ広まっていますが、高校生などの若い世代や、育児を離れて久しい高齢者に対する認知度は低く、今後は、当事業を幅広い世代にPRしていくことが課題です。
昨年は、高校生に対して当事業を知ってもらう機会をつくったり、高齢者には、当事業で使うポップに対する意見を聞く場を設けました。認知度アップに向けて、取り組んでいます」と古川さん。

育児世代だけでなく、全世代に広めることで、地域全体での育児支援の機運が高まることが期待されます。

今後、当市だけでなく、全国に広めていきたい。子育て世代の人が地域に守られ、安心して子育てできる社会に

旗を持って集まる人々の様子
今後の展望を伺うと「今後は、ベビーステーション事業を当市だけでなく、近隣県、そしてやがては全国に広めていきたいと思っています。育児世代が、地域に守られ、安心して子育てできる環境にしていくことが、少子高齢化の解決につながると思っています」と山本さんは言います。

また、富士宮市は世界遺産富士山のまちとして、「富士山を守り 未来につなぐ 富士山SDGs」を掲げ、2021年、内閣府より「SDGs未来都市」に選定されました。

「『SDGs未来都市』選定を受け、当市独自の『富士山SDGs』ロゴマークを制定し、普及・周知に努めています。当事業は、(SDGsの)目標(ゴール)5である『ジェンダー平等を実現しよう』に基づくものです。今後も、SDGs達成を目指し、子育ての負担を軽くし、笑顔で子育てできる環境づくりや社会のみんなで子育てしていく地域づくりを目指していきたいと思っています。当市では、寄付企業に対し、ホームページ上での企業名掲載や、寄付金が一定額以上の場合、市長による感謝状の贈呈式の開催などを検討しています」とのことです。

子育て世代が孤立せぬよう、「地域で子育てを」を目指し、着実に歩みを進める富士宮市に、寄付をしてみませんか。
(遠藤香織)


【静岡県・富士宮市】ベビーステーションの普及で、子育てしやすいまちづくりを目指しています!