まちの希望を乗せて舞い上がれ! 熱気球でまちの活性化を目指す~北海道上士幌町~
2022-05-16 08:00:00
複数の気球

2020年、SDGs達成に資する優れた取り組みを行っていることにより第4回「ジャパンSDGsアワード」SDGs推進副本部長(内閣官房長官)賞を受賞した北海道上士幌町。2019年、日本初の熱気球競技大会を前身とする「北海道バルーンフェスティバル」で熱気球の関係人口を増やそうとする「熱気球のふるさと」関係人口拡大プロジェクトを立ち上げ、まちの活性化に向けて様々な取り組みを行ってきました。

そして2022年。コロナ禍の影響により、ここ数年はやむなく中止となっていた熱気球大会の開催が決定。第50回の記念大会開催へ向けて歩みを再開しました。

まちの未来を見据え、新しい時代のバルーンフェスティバルを模索する上士幌町の今後の計画や課題について、上士幌町企画財政課ふるさと納税担当主査の山本敦志さんと商工観光課ふるさと納税担当主査の石井竜也さんに、お話を伺いました。

50回大会から100回、150回へと思いをつなげていく

山本さんの写真
最初に、山本さん(=写真上)にプロジェクトの目的について聞いてみました。

「2023年開催予定の『北海道バルーンフェスティバル』第50回記念大会(以下50回大会)の成功が大きな目的です。日本で最初に熱気球大会が行われた上士幌町には、これまでの大会に参加していただいた方や、観客、ファンの方も多くいらっしゃいます。これら関係人口を取り込んで大会を成功させようというのが事業の柱といえます」。
商工観光課石井さんの写真
続けて商工観光課石井さん(=写真上)が今後への思いを話します。

「50回大会の成功はゴールではなくあくまで通過点。さらに100回、150回に向けて進めていくためには人材の育成が必要ですし、人と人との関係の強化も軸になろうかと思っています」。

では、北海道バルーンフェスティバルとはどんなイベントなのでしょうか。

「イベントはお盆の時季、8月の第2週の土日を中心に開催します。お盆の時季にちょうど刈り取りが終わる、小麦畑を離着陸地としています。大学生チームが参加しやすい夏休み中の開催に加え、経験の少ない学生も出場できる規定もあって、大会は学生の登竜門といわれているのです」。

イベントでは、熱気球競技のほか有料の係留体験搭乗などが企画されています。

コロナ禍でも、思い出になるイベントを目指す

ライトアップした複数の気球
プロジェクト開始から約3年、見えてきた課題についても聞いています。

「50回大会となると、これまで通りのことをやっていてはダメだろうと思っていますが、やはり問題となるのは運営の費用です。補助金は限界がありますし、コロナ禍ということもあり、これまで以上の協賛金を集めるのも難しいということで、企業版ふるさと納税を活用する方針になりました」。

「コロナの影響でここ2年、大会は開催できていませんが、2022年度については、非接触型のイベントなどこれまでとは違う方法も考えながら、子どもから大人まで楽しめて、大切な思い出になるようなイベントをつくりたいと思います」。

パイロットに大会運営スタッフ、未来につながる人材育成を重視する

人で賑わう祭り会場の様子
将来へ向けて解決すべき課題についても、石井さんが明かしてくれました。

「パイロットの資格取得費用の補助を行っており、これによって、2021年度までに20名のパイロットが誕生し、クラブも3つ結成されています。一方、イベント開催に関わる人材育成は課題となっています。自治体主催のイベントでも、どうすれば多くの町民の皆さんや企業の方々に参加していただけるのか、検討していかなければならない課題です」。
高校名の入った気球の様子
ただ、頼もしい若者たちも着実に育っているようです。

「地元の上士幌高校には、全国でもたいへん珍しい熱気球部があります。資格をもつ指導者がいるかなど、熱気球部の活動には難しい点があるのですが、本町の場合は、熱気球に携わってきたレジェンドとよばれる方々が協力をしてくださっています。パイロットの資格をもつ顧問が異動になった際も、レジェンドたちが生徒への指導と並行して、(顧問となる)教員のパイロット育成も行ってくださるなど、熱気球部創設からずっと、面倒を見てくださっています」。

「今後は、高校生たちが将来、上士幌町で働きながら熱気球に関われる仕組みや、熱気球大会に出た大学生が、卒業後に上士幌に移住し熱気球を続けるといった、関係人口の拡大につながる施策が大切だと思っています」。

カーボン・オフセットやワーケーションも取り込み、大会を成功に導く

空に向かう気球の様子
今後の大会運営については、特に環境への配慮の必要を感じているようです。

「出店で使う容器などを環境に配慮した物に転換したり、ごみを減らす取り組みを進めたりするほか、熱気球自体も環境に配慮できないか検討しています。また、一般的な熱気球は浮力を得るためプロパンガスを燃料とするバーナーを使いますが、このプロパンガスの燃焼に対し、町有林の間伐で発行しているカーボン・オフセットのクレジット(※)を活用したCO2(二酸化炭素)のオフセットを検討しています」。

熱気球の袋部分に空気を送り込むための大きな扇風機も、価格が下がることが前提ながら、石油燃料のものから電気式への転換を検討するなど、寄付金が集まることで、様々な環境対策を実行に移すことができるようです。

インタビューの最後には、「熱気球のふるさと」関係人口拡大プロジェクトの寄付企業に対して、研修やワーケーションの提案について、気になるアイデアを明かしてくれました。

「寄付企業様は、可能なかぎりバルーンフェスティバルにお越しいただきたいと思っています。どんな大会なのかをご自身の目で見て、熱気球に乗って、熱気球の素晴らしさ、楽しさを知っていただきたいです。研修として運営に携わりながら、大会を内側から体験していただくこともできると思います」。

「また本町は現在、ワーケーション事業も進めています。滞在中のプログラムや町での楽しみ方についての提案も可能です。町営のワーケーション用のシェアオフィスや、民間運営のワーケーションに適した宿泊施設も用意しています」。

関係人口拡大や町の活性化の施策として、上士幌町がスタートさせた「熱気球のふるさと」関係人口拡大プロジェクトですが、カーボン・オフセットやワーケーション事業との連携という、時代に即した魅力も付加して、興味深いプロジェクトに進化していました。プロジェクト詳細やワーケーション施設の情報などもぜひチェックしてみてください。
(オフィス・プレチーゾ 桜岡宏太郎)

※カーボン・オフセット
カーボン・オフセットは、私たちの活動により排出される二酸化炭素などの温室効果ガスの排出をまずできるだけ減らすように努力をした上で、それでも排出してしまう温室効果ガスの排出量を、ほかの場所での削減・吸収活動(削減・吸収量)により埋め合わせようという考え方です。
カーボン・オフセットは、クレジットを活用することで誰でも実施できる仕組みであり、自らの削減以上に更なる温室効果ガス削減を進めることができる社会貢献活動でもあります。
(カーボン・オフセットフォーラム(環境省)より抜粋)

【北海道・上士幌町】「熱気球のふるさと」関係人口拡大プロジェクト

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