【企業版ふるさと納税コンサルタントに聞く】人材派遣型のメリットと活用例
2022-03-31 08:00:00
2020年に企業版ふるさと納税(人材派遣型)が新たに創設されました。これにより企業が寄付をした自治体の寄付活用事業に人材を派遣することで、人件費相当額にも税額控除が受けられるようになったものの、実際のところ活用例はまだまだ少なく、制度はいまひとつ浸透していないようです。改めて制度の内容や活用例などをまとめました。
内閣府 企業版ふるさと納税(人材派遣型)概要
内閣府 企業版ふるさと納税(人材派遣型)概要
企業にも自治体にもメリットがいっぱい。制度を学んで活用しましょう
企業版ふるさと納税(人材派遣型)とは、新しい地域貢献の形として、お金と人材をセットで提供するモデルになります。まずここに、自治体が立ち上げた、企業版ふるさと納税を活用した地域課題解決プロジェクトがあります。企業は自治体を通じて、寄付金とともに人材を派遣してノウハウ支援を行うことで、企業版ふるさと納税による税額控除を受けられます。
寄付を原資とした事業費から人件費がまかなわれるので、結果として人件費の削減という効果が生まれます。例えば、1000万円の寄付(人件費分を含む)とともに人件費800万円の従業員を受け入れてもらったとします。その場合、企業版ふるさと納税による税額控除が受けられるので、人件費分も含む総額1000万円の寄付に対して最大で約900万円の軽減効果が発生し、企業側の負担は実質100万円ほどとなります。
自治体としては、実質的な人件費を負担することなく専門知識や経験をもつ人材を受け入れることができるので、プロジェクトの質を上げるとともに推進力が得られます。さらに、企業と自治体がつながるきっかけづくりとしての活用も見込まれます。
寄付を原資とした事業費から人件費がまかなわれるので、結果として人件費の削減という効果が生まれます。例えば、1000万円の寄付(人件費分を含む)とともに人件費800万円の従業員を受け入れてもらったとします。その場合、企業版ふるさと納税による税額控除が受けられるので、人件費分も含む総額1000万円の寄付に対して最大で約900万円の軽減効果が発生し、企業側の負担は実質100万円ほどとなります。
自治体としては、実質的な人件費を負担することなく専門知識や経験をもつ人材を受け入れることができるので、プロジェクトの質を上げるとともに推進力が得られます。さらに、企業と自治体がつながるきっかけづくりとしての活用も見込まれます。
具体的にはどうすればいいの?
この制度を利用して企業が寄付金とともに人材を派遣できる先は、寄付活用事業を行う自治体や地域活性化事業を行う団体などで、寄付活用事業に関与する場合に限ります。
自治体の職員として派遣する場合は、その役職を参与など特別職非常勤職員にすることで地方公務員法が適用外となり、柔軟な勤務形態がとれるようになります。また、自治体が、民間企業や一般社団法人、NPO法人などに寄付活用事業を委托する場合は、これらの団体の従業員として派遣することになります。
派遣された人材は必ずしもフルタイムで出勤する必要はなく、例えば週に3日だけ、あるいは毎日午前中だけなど、必要に応じて勤務内容を自由に設定することができます。
自治体の職員として派遣する場合は、その役職を参与など特別職非常勤職員にすることで地方公務員法が適用外となり、柔軟な勤務形態がとれるようになります。また、自治体が、民間企業や一般社団法人、NPO法人などに寄付活用事業を委托する場合は、これらの団体の従業員として派遣することになります。
派遣された人材は必ずしもフルタイムで出勤する必要はなく、例えば週に3日だけ、あるいは毎日午前中だけなど、必要に応じて勤務内容を自由に設定することができます。
気をつけたい! 人材派遣型活用の留意点
ただし、人材派遣型を活用するにあたっては、自治体、企業それぞれにいくつかの留意点があります。
まず受け入れる側である自治体が気をつけるべきこととして、任用される職員の役割を明確にしておくことが挙げられます。事前の合意のうえ文書として残しておけば、無用なトラブルを避けられます。また、民間企業と自治体では、職場環境や適用される法令などが異なるため、任用された職員が困惑することも予想されます。丁寧に職場ルールを説明するとともに、庁内には寄付企業の従業員が任用されていることや、その期間などを周知することも必要です。
まず受け入れる側である自治体が気をつけるべきこととして、任用される職員の役割を明確にしておくことが挙げられます。事前の合意のうえ文書として残しておけば、無用なトラブルを避けられます。また、民間企業と自治体では、職場環境や適用される法令などが異なるため、任用された職員が困惑することも予想されます。丁寧に職場ルールを説明するとともに、庁内には寄付企業の従業員が任用されていることや、その期間などを周知することも必要です。
では派遣する企業側ではどうでしょうか。自治体職員は多様な業務を兼務していることが多く、特定のプロジェクトに専任しているという形態は少ないことを認識しておきましょう。また、自治体職員は3年間ほどで人事異動があり、多くの職場を経験しています。機密情報の保護を遵守することにも注意が必要です。
自治体と民間企業では業務の慣習などにおいても異なる点が多く、最初は双方が困惑するかもしれません。しかし、自治体にとっては民間企業の働き方の良い点を取り入れる機会であり、民間企業にとっては自治体の意思決定のプロセスを理解する絶好のチャンスともいえます。
自治体と民間企業では業務の慣習などにおいても異なる点が多く、最初は双方が困惑するかもしれません。しかし、自治体にとっては民間企業の働き方の良い点を取り入れる機会であり、民間企業にとっては自治体の意思決定のプロセスを理解する絶好のチャンスともいえます。
実際の活用例は? 新潟県と伊藤忠テクノソリューションズ株式会社の取り組み
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社は新潟県に対し、派遣人材の人件費を含む1000万円の寄付を行いました。これは都道府県としては全国初、自治体としては2番目の活用事例になります。
新潟県ホームページ 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社様から企業版ふるさと納税(人材派遣型)を活用した寄附の申出をいただきました
新潟県のホームページには、今回の人材派遣型の活用について、申出金額や派遣人材の所属と氏名、県における任用形態、寄付活用事業の名称などが明記されています。このように、どういった内容でどういった人を派遣したのかを明示することが、後々のトラブルを避けるためには大切といえます。
そのほか、内閣府のサイトでは、留意すべき点などをまとめたQ&A集を掲載しています。内容については下記動画で解説しているので、ぜひこちらも一度ご覧ください。
【解説動画】
人材派遣型の適用範囲について(人材派遣型)
任用・勤務形態、派遣元企業との兼業可否について(人材派遣型)
地域再生計画の認定について(人材派遣型)
自治体が受け入れる際の留意点(人材派遣型)
いかがだったでしょうか。人材派遣型は、自治体・企業双方にとってメリットの大きい制度です。企業側でいえば、例え人件費相当分に対して約9割の税額控除を受けることができなくても、それ以外のメリットを考えると充分に活用する価値があるといえます。自社の事業分野で気になる寄付プロジェクトがあれば、ぜひ人材派遣型を検討してみてください。
(企業版ふるさと納税コンサルタント 小坪拓也、聞き手 日下智幸)
新潟県ホームページ 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社様から企業版ふるさと納税(人材派遣型)を活用した寄附の申出をいただきました
新潟県のホームページには、今回の人材派遣型の活用について、申出金額や派遣人材の所属と氏名、県における任用形態、寄付活用事業の名称などが明記されています。このように、どういった内容でどういった人を派遣したのかを明示することが、後々のトラブルを避けるためには大切といえます。
そのほか、内閣府のサイトでは、留意すべき点などをまとめたQ&A集を掲載しています。内容については下記動画で解説しているので、ぜひこちらも一度ご覧ください。
【解説動画】
人材派遣型の適用範囲について(人材派遣型)
任用・勤務形態、派遣元企業との兼業可否について(人材派遣型)
地域再生計画の認定について(人材派遣型)
自治体が受け入れる際の留意点(人材派遣型)
いかがだったでしょうか。人材派遣型は、自治体・企業双方にとってメリットの大きい制度です。企業側でいえば、例え人件費相当分に対して約9割の税額控除を受けることができなくても、それ以外のメリットを考えると充分に活用する価値があるといえます。自社の事業分野で気になる寄付プロジェクトがあれば、ぜひ人材派遣型を検討してみてください。
(企業版ふるさと納税コンサルタント 小坪拓也、聞き手 日下智幸)